第4話 金城家にて
「それで一色さん、ご家族は?」
これ、どっかで見たシーンだな。
今日は友香が家に来て、夕ご飯を食べている。
「はい、両親と、兄と、弟と私の五人家族です。」
「えっ!友香、お兄さん、いたの?」
「県外のK大に進学したので、家にはほとんど帰ってこないんですけど。」
「ほう、K大かね。」
K大っていったら、難関大学じゃないか。兄の存在自体も驚きだが…。友香の手柄ではないが、イメージアップに使える。ナイス、お兄さん。
そういえばこの前、一色家でご飯を頂いたとき、食卓で僕は左側に友香のお母さん、角を挟んだ右側にお父さんという、微妙な位置に座らされていたのだが、僕が座っていたのはお兄さんの席だったのか。
「卒業後の進路は、どうするつもりかしら。」
どうしてどこの家も同じようなことを聞きたがるのか…。
「はい、大学に進学するつもりですが…、このポン酢、美味しいですね。どこのメーカーですか?」
進路なんて考えてなかったんだろ。しかも、褒めるに事欠いてポン酢かい!もっと他の物を褒めればいいのに…。
「まぁ、わかってくれたの?これ、私が作ったのよ。」
「ええっ、自家製ですか?」
ナイス!友香!よし、アシストしてやろう。
「友香、うちの母さんは、煮物が得意なんだよ。」
彼女は尊敬する桃華先輩になりきって、上品に煮物を口に運ぶ。もぐもぐ食べるのを両親が見つめる。
「うーん、ちょっと辛いです。うちが薄味なのかもしれませんけど。」
そこは多少口に合わなくても褒めておけばいいのに!
両親は『この小娘がなにいうてんねん』といった顔をして煮物を口に運ぶ。
「まぁ!ちょっとこれ、味付け間違えてがえてるわ!どうして…。」
「辛いな、どうしたんだ母さん。」
「あっ、お醤油入れてから、宅配を受け取って、その後もう一回お醤油を入れたかも。」
「一色さんは正直だね。」
父さんは、おべっかとかごますりが大っ嫌いな人だ。今のは相当ポイントが高い。
「金城君は、卓球がとっても上手いんですけど、中学生にも嫌な顔一つしないで練習相手になってくれるので、大人気だって弟が言ってました。」
一人息子をさりげなく褒めたたえ、作るのに手間のかかるクリームコロッケをおかわりまでして重点的にもりもり食べ、母さんに早くも気に入られていた。
食後、僕の部屋で話をという申し出をやんわりと断り、友香はリビングで僕の両親とクイズバラエティー番組をを観た。父さんが難問を答えると『すごい!』と驚き、さりげなく難読漢字を読んで、『たまたま知ってました。』と可愛く笑った。父さんは嬉しそうに友香を見ている。
テレビ番組が終わると、友香は母さんの自家製ポン酢の入ったビンとクリームコロッケの残りをタッパーウェアに入れてもらって帰って行った。
完璧だよ、友香!君は一体何者なんだ…。
僕から友香へのライン
『今日は気疲れしなかった?』
『全然!ご飯、美味しかったし。私、ご両親には気に入ってもらえたかな?』
『バッチリだよ。あの振る舞い方、いつ身に付けたの?』
『私の
そうだったんだね…。
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