第114話 流れるときと雨上がり

雨上がりの空は青く澄んで

それでもどこか他人行儀に

すまし顔で僕を見下ろすから

ここに立つことさえ

心許なくなってしまう


あんなに降り続いた雨は

跡形もなく消えてしまった

取り残された僕だけが

まだ響く雨音の中にいて

それでも流れていく時の

ささやかな音を聴く

回り出す時計の針

止まることない単調な調べ


ツンと胸を指す痛みを 

寂しさだとは思いたくなくて

しっとり葉を濡らす朝露に

そっとこの手を差し出した

昨日の名残をほんの少し

心の奥にとどめていたくて

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