第113話 風

昨日の夢は

吹きすさぶ風に飛ばされて

もう陰も形もなくなった


残されたのは虚無


手探りで探すけれど

何を探しているかも分からない

力なくその手を下ろす


冷えていく指先


このままここで目を閉じて

風に消えてしまえたら

きっとこんなに苦しくはなくて


それでも苦しみを選ぶのは

やっぱり捨てきれない夢

この手でまた触れたくて


風はまだうなりをあげて

何もかもを奪おうとするけど 

奪われてもまた見つければいいと

密かに手を握りしめた


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