第109話 愛を知る
山肌を駆けあがる桜色が頂上までも彩り始め
また新たに時が流れていることを知る
コートを脱ぎ捨てた体はまだほんの少し寒く
それでも降り注ぐ日差しは柔らかい
何となく季節に乗り遅れた気分の午後
今日もまたどこかで鳥が鳴いている
あれほどまでに鋭くこの身を刺した
冷たい風は今はどこへと向かうのか
ぬるい風に身を任せながら思うのは
過ぎることを願い暮らしたあの日々のこと
痛みを伴うほどにしんと冷えた静けさが
今なら分かる。確かに好きだった
来るべき日々はどんな形でどんな色で
待ち構えているのか分からないけれど
桜色が緑にかわりそしてさらに色を深め
やがて茶色く枯れていくその様を
ただ、見ていく。ただ、受け止める。
そして確かに愛していると知るのだろう
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます