第53話 愛に似たもの
この冷たい朝にあたしは氷のナイフを握って
踏み出す足下に絡みつく鎖を絶ち切った
垂れるしずくに反射する黄色い光の欠片
かじかむ指先 震える手はきっと風のせいだから
人は皆、真面目に愛に似たものをふりかざして
「愛してる」を免罪符に柔らかな心を切り刻んでく
ああ誰も本当の愛なんて知らないくせにね
だからあたしはあたしのナイフで突き刺すの
「愛」を
今そこに抱えてるものは、一体何?
偽物の愛ならばもういらない だから壊して
きらめく朝日がまぶしくてそっと目を閉じた
かじかむ指先 震える手はきっと風のせいだから
だから壊して この手で 殺して
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