第29話 この橋の上で

この橋の上で私は

いくつもの夕日に見送られ 

いくつもの川の流れを見送った


大型車の生み出す揺れに驚いて

しつこい蚊につきまとわれて

通行人に振り返られて

それでもこの橋の上が私の定位置で

昼間の喧騒が

いつしか静かな夜に変わっていくのを

この五感で受け止めた


白い鳥が窮屈そうに水の合間に立ち

魚の群れが波を下り行く

そして私は

知らぬ間に川辺の木の影が伸びたのを見て

季節の移り変わりを知る


この橋の上で私は

またいくつもの時を過ごし

いくつもの思いを重ねる

そして何事もなかったかのように

いつもの自転車にまたがって

いつもの明日へと帰るのだ

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