第6話 果実

それは絶望の色した果実

荒んだ影を宿しながらも

なぜか目を惹きつけられて

知らぬ間に手を伸ばす


歯を立てるごとに溢れる汁は

甘い香りを周囲に放ち

知らないうちに体ごと

奈落の底へと引きずりこむ


それでも愚かな肉体は

甘さを拒絶する術を知らず

ずるずると絶望に染まる

希望の色を見ないまま


それは絶望の色した果実

闇の中から手を伸ばしても

指先さえ触れられない

その香りには届かない

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る