日記を燃やして分かったこと

バケツに入った生ごみを捨てる。

息を止めて三歩離れても、産まれかけた生き物の匂いが漂っている。

たまらず、シャベルで周りの土をかける。

土のなかから這い出てくるような気配を感じて、火でも燃やして灰でも被せようと思い立つ。


燃やすものを探してベットの下の収納スペースを漁る。

たくさんの日記が出てきた。何冊も、何冊も。

布袋いっぱいのそれとライターを片手に、外に出る。


焚火台に木材を並べて、日記のページに火をつける。

思いついたように火が移りはじめ、いよいよ熱が回り始める。


日が落ちて、肌寒さを背中で感じながら、ぐらりひりつく光を放つ熱源を眺める。

棒で突く、ふぅと息を吹き込む、わっと燃え上がる火に驚く。

そうこうしている間に、日記帳は一冊もなくなり、残ったのは灰の山。


生き残った木材の弄って、祠のような空間を作る。

炉となった空っぽな空間を眺め、そこが熱の中点のように錯覚する。

遊び心に身を任せて、そこに小枝を投げ込めば

"愚か者め"と言わんばかりにたちまちに発火し、燃え尽きる。


そこはまるで、侵してはいけない禁域のようであり、何もないことが正しさのように思えた。

燃え盛る"ガワ"があるから"ウチ"に命が宿るように。。。

熱が無ければただの空間、しかし燃える熱の中に確かにそこに存在を感じさせる何かが佇んでいる。


無駄なものでも、枯れたものでも、積み上げて燃やした瞬間に確かにそこに存在するもの。

今そこで燃えているものが真実であり、真実だからこそ見えない何かが生きている。

夢中ならぬ、無中ではないか!

今まで探していたものがどおりで見つからないわけだ。

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