歩行者専用信号機でも止められない

マグマの光に包まれた行進を止めることは出来ない。

情熱のままにどろりどろりと流れ、眺めるだけ。

急かすことも、せき止めることも出来ない。


納得させるように覆いつくし、のっぺりとした足跡を残してなお進み続ける。

浴びる熱量は決して快適ではなく、暗闇に浮かび上がる光りは闇に溶けた鈍色だ。


堂々と、満足げに流れ進み、やがて海にたどり着く。

それでもなお飽き足らず、冷えて固まり礎となって歩みは続く。


熱い血潮を辿っていけば、高い高い山の上。

透明な毒素が地を這うてっぺんから流れ落ちる血のような赤。


地より産まれて、地へ帰る。

自転のように終わらぬ回帰を止められる者はいない。


あの老人の余裕に満ちた散歩は、マグマのように、車さえも止めた。

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