変態は気持ちが悪いものだ

善いことをしたときに生まれた気持ち悪さを歓迎しよう。

眠気を振り払って早起きした時のけだるさこそが勝利の証だ。


思えば、変わる瞬間が一番気持ち悪かった。

入学式の体育館。

見慣れぬ土地への引っ越し。

新しい職場への異動。


期待と不安が入り混じったマーブル色の感情が泥のように混ざって、感情が深くに眠ってしまうような感覚。


誰しも、変わろうとしたときには清々しいものだ。

お釈迦様のクモの糸を見つけた時のような感動。

まだ掴んだわけでもなく、見えただけなのに先走って喜びを貪ってしまう。


まだ、深い井戸の中なのだ。

習慣という井戸の底から、見えただけ。

顔を上げながら、井戸を登るのは難しい。

ひたすらに手足を動かして、せっかく降ってきたアイディアを掴むまではあがくしかないのだ。


喜びを後回しにすることで生まれる感動の果実を味わうために、手足を動かさなければならない。

もちろん、蹴落とすためではなく、登るために。


救いを求めて齎された糸は、必ず登るためにある。

ならば、体を与えられたのもきっとそのためだろう。


辛さやけだるさは、変態の証。

成虫になるその日まで、気持ち悪さは続く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る