裸でいられることの幸せ

尊敬するミュージシャンがいた。


僕が知ったときにはもう引退してしまったけど、心を音にすることが出来る素敵なミュージシャン。


最後のアルバムを出したときに、インタビューがあった。


幸せな時間。それはどこにあるかと、答えていた。


幸せな時間は、自分が素直でいられる時間のことです。


子供が幸せなのは、素直な時を自由に過ごせるからだ。


大人になっても、それは十分可能だと思う。


大人になると素直でいることが、とても脆くて剥き出しにしてしまったような恐怖感に変わってしまう。


きっと成長の過程で柔らかいところをみせると痛い思いをすると知ったからだろう。


固さを持って生まれた命はない。


固さは後天的に身に付けるものだ。


無垢さは削ぎおとされて、危機感から殻を造るソテツのように。


誰しもが心の芯に無垢さが潜んでいる。


殻を脱ぎ無垢な肌を空気に晒すことが出来るならば、きっとそれは幸せな時間なのだろう。


弱点を晒しても生きられるのは、底無しに相手を信じられるからなのか。


裏切られ、止めを刺されたとしても、その痛みはきっと刹那の内に終わるだろうから。


信じて殻を少しずつ脱いでみたい。

素直な時間の酸素を吸い込むためにも。

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