「首」の機能をもう一度

不幸者こそ、喉から歌を歌って下さい。

嘘偽りも暖かさを帯びれば春風になるから。


幸せ者ほど、絶望の井戸を覗きこみなさい。

真実の水に浸せば幸せのメッキが剥がれるから。


人のからだが水で出来ているように、私たちの精神もまた状態変化の経過でしかない。


メトロノームのように規則正しい降り幅のなかで、知らず知らずに貸しが出来たり、ツケを払ったり。


人間は自由を求める。

システムに自分こそは抗えると思うものこそが、針先の重りとなって、深い絶望の淵に死を選ぶ。

カッチコッチ、カッチコッチ。

何往復目かに知ることになる。

これは繰り返しなんだって。


降り幅に意味もなく。

スピードにも意味がない。

遠ざかる景色と近づく重打のような感覚。


年老いた者ほど、ジェットコースターのレールは変わらず、天候と乗客の違いでしかないと、風のように爽やかだ。


どうあがいても下りも上りも来るのだろう。

だけど首は動くんだ。



落ちるとき後ろを振り向き、登るとき下を向く。

首は恐らく神が与えた自由意志。

疲れたときは首を回そう。

案外首はよく回る。

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