絶対的幸福論
猫柳蝉丸
本編
私は今朝、赤ちゃんを産んだ。
周りの誰にも祝福されない出産だった。
お父さんやお母さん、友達ですら私の出産を止めた。
絶対に幸せになんかなれない。
親子揃って不幸になる未来しか残っていない。
皆してそんな言葉で私を不安にさせた。
酷い言葉で胸が痛まされる事も多かった。
皆が心配してくれてるのは分かる。確かにちょっとだけ早い出産だったかもしれない。
これから訪れる未来に不安が無いと言ってしまったら嘘になる。
私だってちょっと怖い。
周りの言葉に惑わされてしまいそうになる事もあった。
でも、大好きで大好きで、大好き過ぎて怖いくらい大好きな人との子供だから。
今も傍で幸せそうに笑ってくれているから。
だからこそ、どんなに大変な事があっても、二人でなら、ううん、三人でなら乗り越えて行けると信じられる。不安をずっと上回る希望と安心感を私は持っていられる。幸せな気持ちのままでいられるんだ。
絶対に幸せにしてあげるから。
赤ちゃんをこの腕の中に抱きながら私は誓う。
今までの人生、私は愛されて幸せだった。愛される事は幸せに満ちていた。
まだ十四年しか経っていない人生だけど、私はずっと大きな愛に包まれて生きてきた。
辛い時や悲しい時、楽しい時や嬉しい時、傍で私を愛してくれていた人がいた。
分かるんだ。愛される事の幸せ、誰かに愛されている安心、愛の強さを。
これからはその愛を赤ちゃんに返してあげる番なんだと思う。
今度は私の愛で赤ちゃんを包んであげる番なんだ。
悲しい時は傍に居て抱き締めてあげよう。嬉しい時には一緒に笑ってあげよう。苦しい時には揃って立ち向かってあげよう。幸せな時には三人揃って幸せに包まれよう。そうやってどんな家族よりも強い絆で結ばれた家族になっていこう。
私達なら大丈夫。心配された出産だったけど、私も赤ちゃんも元気そのものだ。
今だってこんなに強く私のおっぱいを吸うくらい赤ちゃんも元気だしね。
不安になる事なんてなかったんだ。
私達の未来はやっぱり祝福と幸せに包まれてるんだ。
だから。
「これから三人で幸せになってみせようね、お兄ちゃん」
「うん、絶対に幸せにしてあげるよ」
私はお兄ちゃんと微笑み合って唇を重ねた。
そのキスは幸せに包まれていてとても甘くて涙が溢れ出した。
嬉しくて涙が出て来るなんて初めての経験だった。
絶対的幸福論 猫柳蝉丸 @necosemimaru
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