学校では教えてくれなかった、うさぎとかめ
木沢 真流
それは始まりに過ぎなかった……
むかしむかし、あるところにウサギのうさ吉とカメのカメどんがいた。
ある朝うさ吉は、ちょっとカメどんをからかってやろうと思い、「おはよう」と挨拶するカメどんにこう言った。
「『おはよう』だって? こりゃおかしい。だってカメどんは、ちっとも速くないじゃねえか」
カメどんは答える。
「いやいや、ゆっくり行くのも悪くないですよ」
うさ吉はさらに言う。
「何を寝ぼけた事を言ってるんだ。速い方が良いに決まってるだろ」
こんな言い合いをしているうちに、どちらが速いのか、ふもとの岩から山のてっぺんまで駆け比べをすることになった。負けた方が勝った方の言うことを聞くという条件だった。
うさ吉は、用意ドンの合図で飛び出すと、あっという間にカメどんとの距離を広げた。
カメどんがあまりに遅いので、うさ吉は一休みすることにした。ところが、一休みのつもりが眠り込んでしまい、その間、カメどんは必死に山のてっぺん目掛けて這いつくばっていた。
その一つの目的に向かって全力を尽くす姿は、まるで資源の少ない小さな国が、歴史のある大国に立ち向かう姿に似ていた。敢えてバレーボールで例えるなら、回転レシーブという妙な技を発案して金メダルを獲ろうとしたり、奇想天外な軽い飛行機を開発して戦争に勝とうとしたりするようだった。
その一つに向かってただまっすぐ、ひたむきに突き進む努力のおかげで、カメどんはてっぺんに辿り着いた。時間はかかったが、うさ吉は眠っていたので、勝てた。
めでたしめでたし……。
のはずがなかった。
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