第10話 囚われの魔法使い。
「ん、ここは…」
両眼を開き、辺りを見渡すが真っ暗でなにも見えない。
その前に身体が不自由であることに気づく。
手足を椅子に縛られており、明らかに私が何かの人質の立場にあることは確かだ。
「うっそー…」
元々物分かりの良い方ではあるが、この状況は納得しようにもしたくない本能の方が勝る。
「何でこんなことなってるのよ」
「いや、何でってことはねぇだろ」
私が独り言を呟いていると言う間にか後ろのドアから人が入っていた。
「お前、さっきまでの出来事覚えてねぇのか?」
「え?」
そう言われて私は頭を巡らせる。
「あ、思い出した」
確か、夜道に知らない大男に出会って、ミノルを知らないかって言われて…
「こんな人からミノルを守らないとって思って殴ったんだった」
「性格には殴ろうとしたが、空振りしてそのまま体勢を崩して転倒したのな」
マジでなんの予備動作も無しに殴るって、色々おかしいからな、と男の人は前に回ってきて告げる。
「いやだって絶対ミノルに危害を加える気でしょ?」
「フン、どうやらお前を攫ってきて正解だったようだな」
私が憤っていると、赤髪の男は高笑いをした。
「言動から考えるにお前はミノル達の仲間で間違えないだろ?」
仲間思いのあいつがお前を放っておくわけがない。直にここへやってくるだろう、とそいつはニヤニヤした目を隠さずに話す。
「いや、私は別にあの人達の仲間になったわけじゃ…」
「そうだったらいきなり殴りかからねぇだろ」
確かにあの行動は今考えてもおかしい。
ミノル達を不審な奴らとしか思っていなかったはずだ。
でも、無意識にそうしていた。
さっきも、ミノルを守らないといけないという使命感に駆られていた。
これは、洗脳か?
「どっちでも良いけどよ、そう易々と開放する気はないからな」
「えー!何でですか!」
「いや、危ないもん」
武器もなにも持っていないとはいえ、拳振る奴の拘束なんて解いたらどうなるかわからねぇじゃん、と当然のように彼は言う。
いや、当然といえば当然なんだけど。
「それに、お前が仲間じゃなくても助けには来るだろう」
「え、なんでですか?」
私が不思議そうに聞くと、男は一言答えた。
「お前のスカートに発信器入ってたからな」
「え、なんで」
とっさに手をポケットの中に入れようとしたが、結ばれている手ではもがくことで精一杯だった。
「あんまり動くと縄食い込むぞ」
えらく、優しい人だな。
攫われておいて言うことではないと思うが。
「発信器はもう取っておいた」
「あ、ありがとうございます」
男の手にはごく小さな機械が乗っていた。
この距離からは全然分からないんだけど、多分GPSの類なんだろうな。
「じゃあ、あなたはそれまで待っている感じですか?」
「そのつもりだが、お前も起きたし、少し遊んでやろうかな」
そう言うと、さっきまで少し抜けていたような表情が、明らかにニヤッとした気持ち悪い笑みに変わった。
「え、遊ぶって」
「そりゃ、お前も女だろ?分かるよな」
「いやいやいやいや!」
冗談じゃない。
私の身体なんて何にも取り柄無いし、乱暴しても何にも得しないよ!
「やめて!私に乱暴する気でしょ!エロ同人みたいに!エロ同人みたいに!」
「安心しろ!怜花の貞操は僕が守る!」
そんな大声が上から聞こえた。
薄暗い天井を見ると、ミノルと隼人がそこの足場に立っていた。
あの、気持ちはありがたいんだけど…。
その言い方はちょっと誤解を生むかな。
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