第33話 最強召喚士、再び村から追放される
「ル・バラン城塞って所から来たんだが、ライゼルはここにいるか?」
「ライゼルちゃんはロランナ村に向かってますわよ~! どなたかしら~?」
「オレはル・バランのギルドマスターレグルスってもんだ! あんた人間……じゃなさそうだな」
「うふふ~口が過ぎると、一生眠らせてあげるかも~?」
「こ、怖ぇぇ……」
◇
トルエノ曰く、今さらロランナ村に行っても手出し出来ないと言われた俺は、村を上から眺めている。
「バリーチェ、降りぬのか?」
「この前と様子が違いすぎるなぁと」
「ふみゅ? 余はバリーチェを守るのだ! 余を頼って良いのだ!」
「あ、ありがとう。じゃあ、行って来るよムルヴ!」
「うむ!」
神鳥のセーンムルヴは、俺と幻獣契約をしてどこでも飛んで行ってくれるようになった。
それからというもの、実際の年齢はどうか分からないくらいに、子供っぽく接して来る。
実際には計り知れない強さを有しているみたいだが、戦わせたくない気持ちになってしまった。
神鳥の姿でも少女の姿でも、随分と距離が縮んだ感じになったのが原因かもしれない。
ロランナ村の前に降り立つと、見たことも無い騎士が数人立っていて俺を睨みながら近づいて来た。
「「……お前はライゼル・バリーチェ、召喚士か?」」
「あなた方は?」
「我々は自警団だ。この村のギルドを守るために雇われた。悪いが、村に召喚士を入れるわけには行かない。即刻、立ち去れ!」
「――な!? 何だよそれ? 俺はここの出身で、自由に入れる人間なんだぞ? どこから雇われたか知らないけど、邪魔をするなら――」
「話に聞いた通りだ……お前はこの村を害する者であり、ギルドを潰しに来たのだろう?」
トルエノが言っていたことはどうやら、このことみたいだ。
みすみす見逃して半端な慈悲を与えてしまったギルドの親父は、俺に相当な敵対心を抱いているらしい。
のどかな風景にあった村の入り口には、物々しい騎士を置いて、召喚士を目の敵にしているようだ。
「俺の家が残っているはずだ。それでも入っては駄目か?」
「駄目だな。ライゼルの家はすでに無いとも聞いている。それでもと言うなら、我々を倒していけ!」
やはりと言うべきか、この前に戻った時に家の中の物はほとんど片付けてしまった。
恐らく、人の住まない家……しかも腫れ物だった俺の家を無かったことにしたのだろう。
「ふぅ……倒す理由は無い。やるべきことが出来過ぎたんでね。ロランナ村は最後に寄ることにする」
思い残すようなことを、中途半端に放置した自分が悪いのかもしれない。
ここで強引に村に入って、ギルドの親父を消し去ることは出来ても、敵が消えるわけじゃない。
それなら、今は俺に迫って来ている連中を一つずつ片付けるしかなさそうだ。
『ライゼル・バリーチェ! 中々会いに来てくれないから、あたしから会いに来てやった』
全ては俺の甘さと油断、最弱の状態が長かった故のミスが姿を見せている。
「……ダークエルフのユーベルは俺を殺したいんじゃないの?」
「違うな。お前の名前を貰ったあたしにとって、お前はあたしの男になったようなものだ。殺すほど憎いことをされた覚えは無いからな」
「お、男!? そんなつもりなんてないぞ!」
「お前はそうだろうが、名前を名乗られた以上、あたしはお前を一生離すつもりは無い」
何という厄介なエルフなんだ。名前を無理やりにでも聞いてしまったのもまずかった。
そのことがあって、俺の名前も簡単に教えてしまったけど、そんなのはあんまりすぎる。
「あたしからは……逃れられない、逃すつもりも無い。せいぜいあたしを満足させるまで、世界を支配してみせろ! そうしたら解放してやるかもな。じゃあな、ライゼル!」
「あ、待てっ!」
タチの悪い追跡者に気に入られてしまった。
最弱から最強となりイゴルたちを消したのに、厄介なエルフに狙われることになるなんて思わなかった。
「ライゼル様……申し訳ありません」
「んん? ルムデス?」
ルムデスといえば、闇エルフを追いかけていたまま戻って来なかった。
そんなルムデスが、ユーベルと入れ替わるように気まずい表情で姿を見せた。
「心配したよ。もしかしてユーベルを追いかけて?」
「はい……しかしあと僅かの所でいつも逃げられてしまい、わたくしの不徳の致すところにございます」
「もしかしてだけど、ユーベルはルムデスの知り合いか何か?」
「……ね、です」
「うん? 何て?」
「ユーベルはわたくしの姉……です」
「姉? お姉さん? え、じゃあ……戦った時に光で消さなかったのもそういうこと?」
「……申し訳ございません」
俺の知る限り、というより今まで外の世界を知ることが無かったけど、エルフは数が少ないのか。
「と、とにかくムルヴに乗って、とりあえずミンザーネ村に戻ろう?」
「は、はい……」
かなりの距離を追って来たらしく、ルムデスは疲れ果てているみたいだ。
「戻るのか?」
「うん、頼むよ。ルムデスを休ませてあげたいからね」
ムルヴの背中にルムデスを乗せると、彼女はすぐに眠ってしまった。
「う……んん……ん」
「え、えーと、ルムデス?」
「ライゼル……様……んん」
「は、はは……寝ぼけているのかな」
寝惚けてのことなのか、長身のルムデスは俺に体を預けながら、体を預けて来た。
「バリーチェ、浮気は許さないのだ! 余は寛大にならないのだ」
「い、嫌だなぁ、そんなんじゃないからね?」
ロランナ村に結局入ることはしなく、することも無かった。
ともかくとして、召喚で得た最強の力で悪しきギルドと、従う人間を支配してやる。
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