恋溢れるさかずき
西秋 進穂
美人占い師と押しに弱い男子大学生
*
「――ようこそ《占いの館》へ。
さあて、早速だけどあんた様が
あーいやいや、恥ずかしがることはないよ。この私、《超美人占い師》の仕事は恋愛相談だと言っても過言じゃあないしさ。
恋に恋する男子大学生。そんなあんた様には――コレだ!
ドュルルルルルルル……ドュン!
名付けて『
――どんなアルコールでも湧いて出てくる魅惑の
そう、その通り! 『飲まして酔わしてドッキドキ』大作戦!
……まあ、聞きなさいって。悪い話じゃあない。
面白い決まりが三つあるんだよ。
一つ。
あんた様は対象者を決める。その人に
二つ。
選択した相手は一度だけチェンジ出来る。なんとまあ優しい仕様だね。
三つ。
飲んだ相手はあんた様にとって都合のいい《酔い方》をする。
……あ、その顔。疑っているね?
さっきも売れたのになあ。この《魔法を無効化する指輪》と一緒に。
この指輪も欲しいかい? 要らない? セットでお買い得なのに。
まあせめてこのコップだけ持って行きなさいな。
代金はそうだね――コレが役に立ったらでいいよ。出血大サービスだ。
……え? まだ信じられない? ――わかったよ。欲張りさんなんだから。特別だぞ? この部屋から出たら意中の相手と《運命的に》出くわすことにしといてあげる。
ほら、行った、行った。占い師も暇じゃないんでね――」
*
――こんなの、信じるバカがどこにいると思う?
占いからの帰り道。日差しが強い。
俺は自身の右手を見た。
優勝トロフィーみたいな形をした銀色の杯が、そこにはあった。
……本当俺って押しに弱いよなあ。
「……はぁ」
そうやって三十センチくらい肩を落としつつ、大通りの方へと角を曲がる。
――するとすれ違いざまに人とぶつかりそうになった
「あっ、と……すみません」
「ああ、こちらこそごめんなさい」
顔を見合わせる。
どえらい美人がそこにはいた。というかこの人は――
「……
「へ? なんだ、
目の前で「よっ」とえくぼを作る女性。この人こそが俺の恋するお相手――霧島先輩。
なのだが……どうしてここに?
――意中の相手と《運命的》出くわすことにしといてあげる
おいおいまさか、うそだろ?
あの占い師――本物なのか?
「おーい、遊太? 何考え込んでんの。ていうかこんなとこでなにやってんの?」
「えーと、まあ別に――」貴方との恋模様を占ってました、とは言えない。
「なによ」
「あ、そうだ」
「ん?」先輩は小首をかしげた。
「あの、先輩。……のど、渇きませんか?」
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