第23話
「パパー。リュシーナがないてるー」
「あー。リュオンもないちゃったー。ヨシヨシ。いいこ。いいこ」
「ミリィ。ユーリカ。赤ん坊の世話してくれてありがとな」
シュリが
「だって、ふたりのおねえちゃんだもん」
「わたしは、ふたりの『おねえちゃんがわり』だもん」
「ああ。二人とも立派な『ママ代わり』だ」
シュリの言葉に満面の笑みを浮かべる二人。
「あら。リュシーナもリュオンも泣いてたの?」
「ああ。『ちっちゃいママ』二人で面倒見てくれていたんだがな。陽が
「ユーリカ。明日ここへ来る時に、パパに『日除け』を持たせるの、忘れないで言ってくれる?」
「リュシーナとリュオンのため?」
「そうよ。アンタたちが小さい時にも使っていたの。邪魔になるからウチの倉庫に置いてあったのよ」
「うん。わかったの」
シンシアとユーリカの会話にレリーナの表情が曇る。シュリがそんなレリーナの手から籠を預かり、ミリアーナとユーリカの前にぶら下げる。
「ほら。ママがお菓子を作ってくれたから、お祖父ちゃんたちのお家に行っておいで」
「「はーい」」
二人は手を握り合って坂を下っていく。その先にシュリの両親が住む家がある。今日は其処に
「・・・村長が此処にいて良いの?」
「もちろん。私の意思はオルガが知ってるもん。だ・か・ら、レリは『そんな顔』しないの」
「まあ・・・。これに関しては俺たちは何とも言えないからな」
あの日・・・ナシードがシュリと共にいつも通りの『見回り』をしていた。そして北の山の麓に広がる森にある『渾々と清らかな水の湧き出る泉』の
「なんだ・・・今のは」
「おい。ナシード。・・・具合はどうだ?」
「なんともない。・・・いや。なんか清々しい気分だ」
ナシード自身には問題なかったが、心配性のシュリに引き摺られて戻った・・・シュリの実家に。怪しい状態のナシードを『愛する家族の元へ連れて行けない』という理由からだった。
何が起きたかを、冷静なナシードと話すたびに興奮していくシュリがなんとか説明し終えた時に、ずっと何かを考えていたオルガが口を開いた。
「此処の神殿で似た話を聞いたことがある」
「神殿・・・?じゃあ、神官も呼んだ方が良いか?」
「いや。・・・俺たちで向かった方が早い」
たしかに、誰かが往復するより片道をゾロゾロ行った方が早いだろう。
「シュリ。レリーナにはシシィがついている」
「ああ。・・・大丈夫。何が起きたのか、何が起きるのかが分からないと安心出来ないから」
「シュリ。俺が考えている説が間違っていなければ、コレは『悪いことではない』」
「・・・わかった。今はオルガを信じる」
シュリは若いが、自分で物事を判断し、人々を正しい道へと導く。シュリにしてみれば、愛する家族を守るためにしていることだ。そのため、それが身近な人の意見でも真偽を確かめるまでは頭から信じない。『
守るためには必要なことだろう。
神殿へ移り、冷静さを取り戻したシュリと自身の問題なのにまるで
すべてを聞き終えた神官は一度部屋を退出し、戻ってきた時には一冊の本を手にしていた。
「
昔、この地に魔物から逃げて来た人々がいた。その中に、8歳と5歳の小さな王子がいた。彼らは魔物たちに城を襲われる前に、いくつもある隠し通路から方々へ逃されていた。1ヶ所から逃せば全滅してしまう可能性がある。そのため、この二人は兄姉とは違う隠し通路から逃されて、少しの護衛と侍従、そして民たちと南へ逃げた。
北から魔物が押し寄せている。少しでも遠く、南に逃げるのは常套だろう。
しかし、この先は崖で逃げ場はない。そのため、崖に沿って逃げていた。そのまま岩盤に囲まれた狭い道を見つけて其処へ逃げ込んだ。此処なら魔物も追って来られないと信じたのだ。
その先に、広い空間があった。森や泉もあり、昼夜問わず仮眠だけで逃げ続けて来た彼らにとって、やっと横になって身体を休ませることの出来る場所だった。いや。これだけ綺麗な場所で眠りながら死ねても良いとさえ思っていた。
大人たちと違い、子供たちは回復が早い。特に王子たちにとって、『自然と触れ合う』のは初めての体験だった。
そして、それは起きた。
泉の
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