第6話
「皆さん。お集まり頂きありがとうございます」
神官服に袖を通した若い男性が、村の最奥にある村長の家の庭で集められた女性全員の前で挨拶をしている。
昨日、村の入り口で声を掛けてきた『神官見習い』とは違う人だ。
そして私たちの村の神官さまは、若い男性から少し離れた机の前に立っている。
その机の上に置かれた水晶玉が『鑑定石』なのだろう。
私の強張った表情に気付いたのだろうか。
いつもの優しい笑顔で頷いてくれた。
まるで『大丈夫ですよ』と安心させてくれるように。
翌日になると、朝から賑やかだった。
私の家に軟膏を貰いに来たルースさんの話だと、昨日までに回った村では『鑑定』に一人も引っかからなかったそうだ。
そのため「ここには『伝説の聖女』の子孫がいる」と、昨夜から村にたくさんの人たちが押しかけてきたらしい。
「大丈夫だよ。レリ」
「騒動を知った『神官たち』が、首都から連れてきた護衛に命じて『村の外』へ追いだしたからな」
そう教えてもらったが・・・
村の入り口から揉めている声が聞こえている。
『儀式を見せろ』
その主張ばかりだ。
中には『聖女の子孫とやらがいるはずだ!』という声も聞こえる。
・・・・・・それだけで私は怖い。
耳を塞いで、座り込んでしまった。
「すでにご存知の方もいらっしゃると思いますが、我々は『次代の聖女さま』を探すために此方の村へ来ました」
若い神官が女性たちに説明をしていく。
『聖女候補』になれば、そのまま王都へ出立するらしい。
「な〜んでこんな場所に『レリーナ』なんかいるのかしら」
聞こえた女性の声に、全員の視線が彼女に突き刺さる。
「ビアンカ」
誰かの言葉に「私は『領主の娘』よ!『ビアンカ様』と呼びなさい!」と声を張り上げる。
「なによ『偉そう』に」
「私らがレリ
口々に罵る人たちに「んな!」と口にするが、それ以上声が出せない。
その間にレリーナはシンシアに支えられて、『村長の家』に入って行った。
男性たちがその扉の前に立ち塞がり、誰も中に入らないようにする。
その中に、竹刀を持ったシュリもいた。
「お前ら親子は、レリーナたちが『聖女』に選ばれないよう、男たちを雇って2人を襲わせた」
「その結果。エレーヌは男たちに殺された」
「私も父も、別に『殺せ』なんて命じてない!」
「レリーナも・・・」
「私は男たちに『2人が『聖女になれない』ようにしろ』と言っただけよ!」
「そのせいでレリーナは外へ出られなくなったのよ」
「あんな子。母親と一緒に死ねば良かったのよ。何が『聖女の子孫』よ!あんな子が私よりチヤホヤされるなんて」
「それが、貴方たち親子が『聖女の子孫を襲わせた理由』なのですね」
「そうよ!それの一体何が悪いの・・・」
ビアンカは最後の言葉が『誰から発せられた』のか、反論してから気付いたようだ。
「あ。あの・・・私は」
今更後悔しても遅い。
すでに、神官の前で『罪を告白した』のだ。
それも神官の質問に証言したのだ。
「領主とその娘を捕縛しろ」
神官の命令に護衛騎士たちは素早かった。
領主もビアンカも、言い逃れは出来ない。
たとえ領主が『あれは娘がした事だ』と主張したとしても、それが通るのは『領民たち』だけだ。
ダントンは領主であり男爵という爵位持ちなのだ。
助かりたいのなら、叙爵を受けなければ良かった。
父親から爵位を継ぐ時にひと言、「自分は相応しくない」と断れば良かっただけだ。
ダントンは護衛騎士に向けて娘を突き飛ばし、その隙に逃げ出そうとした。
しかし、腕を捻られて取り押さえられると「『聖女』ではなく『性女』として俺らの『道具』にしようとして何が悪い!『肩書きの聖女』なんか『腹の足し』にならないじゃないか!」と怒鳴り、村の男たちにボコボコに殴られた。
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