○○に全てを壊された

桜井優希

第1話

拗ねる、怒る、イラつく、こんな感情は普通であり子供の頃はとても普通なこと。大人になっても同じ事。そう、普通なことなのだ。

心の整理がうまくいかないとき、それは人間らしい感情なはずなのだ。


A子は、小さい頃、心の整理がうまくいかずイラつくことは多くはないが、あった。

その度に、

「なんで?お父さん、悪いこと言った?正論だよね。」

そうA父に言われてきた。ただ、心の整理がつかないだけなのに。ほっといてくれれば、心の整理がつくのに。

それを、小さい頃から言われてきた。ずっと、ずっと。だがら、A子は思った。この感情は、いけないことなんだ。私はずっと、何があっても、この感情を出してはいけないんだと。

それから、A子は出してはいけない感情を、押さえ込んだ。ふと、出てしまったとき、またあの父の言葉だ。

「なんで?お父さん、悪いこと言った?言ってないよね。正論だよね。」

それば、A子にとって、悪魔の言葉になっていた。A父が、言った言葉に反論すれば、

「それば、違う。」

全てを否定される。そして、自分の言葉が全て正しいかのように、「正論だよね。」で返される。

A子は、家族の前で作り笑顔をするようになった。イラついている、自分を見られないように。あの、悪魔の言葉を聞かないですむように。機嫌を損ねないように、笑い、自分がイラついてしまったときは、悟らせないで笑う。そんなことを、身に付けていたとき、ふと、A子は気づいた。

「あれ、なんで意味もないのに笑ってるんだろ。」

そんなことを、考えたけれど、A子は気づかなかった。自分の心が壊れかけていることに。

「まぁ、どうでもいいか。」

A子は、自分で壊れていることに気がつかないほどまでに、おかしくなっていた。イラつくこの感情が、本当にいけないことだと、思っていた。

父のあの言葉を聞いた日は、我慢ができなかった自分に戒めとして、リストカットをしていた。辛いと感じてしまったときは、自分で首を締めて、罰とした。


リストカットと首を締めることはA子にとって唯一の心の整理の方法となっていった。



A子

「私一人が感情を出さなければみんな、幸せだよね。」





A子は、作り笑顔が上手になった。それは、家族すらわからなくなるくらいには。




【正論に全てを壊された】

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