第22話
グラセフ・ボナレードとエステル・ボナレードが登城命令を受けて会議室に現れた。すでにグラセフは爵位を娘たちに譲り無爵となっていた。そのため
「トルスタイン。『キミのお
「まだ『序の口』ですよ」
兄は反対隣に座る義父に目を向けながら、隣に座る私に囁いた。私は一度だけ激昂した義父を見たことがある。私がまだ子供だった頃、いま私の隣に座り私の言葉に驚いている兄を守ろうと思い、何の計画も作戦も考えずに動こうとした私に気付いた義父に叱られたのだ。
「無策は、自身も『守ろうとしている相手』も滅ぼすことになる」と。
そして、私は『自らをエサにして
私は上手く隠していたつもりだったが、心が
私たちが社交界にデビュタントすると、初々しいリリアーシュの愛らしさに誰も反対されることはなかった。そして誰からも祝福されて現在に至っている。
そんな私に、エステルは馴れ馴れしく声を掛けて胸を押しつけてきた。
忘れているかも知れないが、エステルは私のひとつ下。リリアーシュ嬢と同じ10歳でしかない。10歳の身体に『大人の胸』。あまりにもアンバランスでしかない。
「あとでトルスタイン様のお部屋にお招き下さいよ〜」
「『不貞のエステル』を不敬罪で捕縛せよ!」
義父の言葉で縄を打たれたエステルは暴れて大声で騒いだ。
「イヤー!助けてください!トルスタイン様ー!私はトルスタインさまの未来の妻よ!王妃になって、私を見下してバカにした者たちを処刑台に送ってやるのよー!!」
すでに会議室に揃っていた貴族たちは『貴族の礼儀』を弁えていないエステルの言動に眉を
うん。いくつか訂正させて欲しいな。
まず、私はキミみたいな
私が大切に思い、守りたいのはリリアーシュ嬢だけだ。
そして、私は『第二王子』という立場。
私が国王になるには、兄に『死んでもらう』ことになるが私にはその気はない。もちろん兄はこんな女を婚約者にすることはない。
この女の言い張る『私と結婚して王妃になる』ことは決してない。
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