49.地下牢にて
この城の階段はちょうど中央に大きなものが1つと東階段と西階段の計3つある。
そのうち地下に繋がっているのは西階段のみ。
その西階段を下っていき、僕と側近は地下牢に到着した。
この地下牢は地下二階にあり、普段は使われていない。
そしてその地下牢の管理は三番隊副隊長のゴブリンに一任されているそうだ。
向かう途中で側近から聞いた話によると地下牢を使うケースは敵の捕虜を収容するときや今回のハヤタたちのように要注意人物を捕らえた時などかなり特別なことらしい。
「ねぇ側近。気をつけろってどういうこと? 」
「そのままの意味だ。決して気を緩めたりするな。何が起きるかわからんからな。」
「うん。わかった。」
側近はこうして僕ら2人のときはちゃんと対等に話してくれる。
ハヤタのせいで僕の部屋も扉が破壊されており、部屋に2人で居てもこうしてタメ口で話すことがなかったから久々の側近のタメ口が日常に戻ったようで少し安心する。
そんなことを考えていると目の前に木製の扉が見えてきた。
「さぁ、この先だ。絶対に気を抜くなよ。」
「わかった。よし、行こう。」
側近が扉を引き開ける。
“ギー”という戸が軋む音が鳴る。
開けた扉の先には左右に5つずつ、鉄格子の部屋が並んでいた。
そして一番奥にゴブリンが椅子に座って事務作業をしていた。
僕たちが入ってきたことに気付くと立ち上がって挨拶をしてくれた。
「魔王様、よくぞいらっしゃいました。ご要件は···これですね? 」
そう言って彼は右手で一番奥にある房を指さした。
暗くて顔までは見えないが戦った僕にはわかった。
そこにはハヤタがうずくまっていた。
「うん。ちょっと外してもらってもいい? 」
「わかりました。外におりますので終わりましたら声をかけてください。」
「わかった。ありがとね。」
ゴブリンはそのまま一礼して扉を軋ませて出ていった。
それを確認すると僕は側近の方を向いた。
側近はそれに合わせて無言で頷く。
僕もそれに応えて頷き、ハヤタの入っている房の前に立った。
「ハヤタ、僕と話できる? 」
「·········。」
返事がない。
そしてゆっくりとハヤタが顔を上げた。
僕のことが見えたのだろう。
カッと目を見開いた。
そして突然飛びかかってきた。
“ガシャン!”と鉄格子がなる。
目は血走り、歯をきしませながら低く唸り声をあげている。
「魔王···殺す。殺してやる。こっちに来やがれ!!! 」
そして無詠唱のまま手に火魔法を発動させた。
「理! 危ない! 」
「おらァァァァ!!!! 」
咄嗟に側近が僕に飛びついてくれたお陰でなんとか回避する。
「ふぅ···。側近ありがと。気をつけろってこういう事だったんだね。」
「あぁ。しかしこの様子だとお前でも話が通じないみたいだな。理が起きる前に私たちも少しでも情報を得たいと思って会話を試みたんだが狂ったように暴れまわって話が出来なかったんだ。ずっと“魔王を殺す”とだけ言いながらな。」
「そう、だったんだ···。」
はてさてどうしたものかと2人で頭を悩ませているとハヤタの入っている房の隣から声が聞こえてきた。
「あのぉ···。さっき理って言いました? 」
その声の主の方へ僕と側近が振り向くとそこにはサヤカがいた。
僕と側近は“しまった”と顔を見合わせた。
さっき避ける時に咄嗟に側近が理と呼んでしまったせいでついついそのまま話をしてしまっていた。
「あ、え、えっと···。」
なんとか誤魔化そうと頭を回すけど上手く言い訳が出てこずにどもってしまった。
「理ってもしかして|隼人(・・)の幼なじみのあの理さんですか? 」
「うん。そうそう隼人とは幼なじみで······え? 」
「やっぱり。玉座の間に入ってきたときにこの世界じゃ|ハヤタ(・・・)って名乗ってる初対面の相手に|隼人(・・)って呼びかけた時から“あれ?” とは思ってたんですよ。」
「え? この世界? あなたはたしか賢者で名前はサヤカで······! あっ! サヤカって隼人の彼女さんの名前じゃない!? 」
「はいそうです。彩りの華と書いて彩華です。理さんのことは隼人から聞いてます。人生で1番の親友だと。」
「僕も隼人のことはかけがえのない親友だと思ってます。ってことはやっぱりあれは隼人なんだね? 」
「はい。ですが······。」
そこで彩華は顔を曇らせた。
そして決意を固めたように顔を上げて僕のことをまっすぐ見つめた。
「隼人のことを助けてください!!! 」
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