28.名前
「ごめん。今日1日は彼ら安静にしてなきゃいけないみたいで今日は出発できそうにないや。」
「そうですか。ではわしは訓練所に戻りますわ。」
「うん。ごめんね。明日の出発時間は今日と同じにするからよろしくね。」
「わかりました。」
そう言って老ドラゴンは訓練所に行った。
「あたいはこれといってすることもないので魔王様と一緒に行動しようと思うのですがいいですか? 」
「うん。いいよ。そしたらこれから人間のところに行って色々話をしようと思うからついてきて。」
「わかりました。」
僕らが人間たちの元に戻ると彼らは感心した様子で怪我をしていた場所を眺めたり動かしたりしていた。
人間たちの中には回復魔法が使えるものもいるはずだがエルフに適うほどではないらしい。
すると僕らが来たことに気づいたらしく背の低い人間が1人、こちらに歩いてきた。
「本当にありがとう。正直ここまで良くしてもらえるとは思ってもなかった。」
「お礼なら治してくれたエルフたちに言ってあげて。困った時はお互い様だしね。」
「お礼ならさっき飽きるほど聞かされましたから大丈夫ですよ。」
そう言ってエルフ長があごひげを触りながらこちらに歩いてきた。
「そう言えば俺たちまだ名乗ってすらなかったな。俺はバティだ。この5人で小隊を組んでいて一応リーダーという役職をもらってる。こっちの背が低いのがレン、隣のガタイがいいやつがブラッド、背が高いのがコウ、その隣のスキンヘッドがメヒアだ。お前のことはなんて呼べばいい? 」
「魔王でいいよ。よろしくね、バティ。」
「おう。よろしくな魔王。」
「それで1つお願いなんだけどね。」
「おう、なんだ? 」
「実は僕らがフーガ村を通った理由がヴァンパイアにこの戦いに参加してほしいとお願いしに行くことだったんだ。それで明日再出発するその旅にリーダーのバティにも同行してほしいんだ。どう? 来てくれない? 」
そう言うとバティは少し驚いたような顔をした。
「お前···それ敵にお願いすることじゃないだろ。俺たちからすればお前らは本来敵なんだぞ? それなのに敵の戦力を増やすことに手を貸すと思うか? いくら怪我を治してもらった恩があるとはいえそれとこれとはまた話が変わってくる。そのお願いは呑んでやることは出来んな。」
「そりゃそうだよね。君たちのメリットが何一つないんじゃこんなお願い聞いちゃくれないよね。ちょっと待ってて。側近とちょっと相談してくる。側近、ついてきて。」
それを聞いて側近はキョトンとしたような顔で返事をした。
「かしこまりました。」
そうして僕らは彼らに声が聞こえないよう少し離れたところで話を始めた。
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