君と、いつか、

とろり。

第1話

題名

君と、いつか、



 教室の窓際にある席で君は本を読んでいる。1枚また1枚とめくる指先はとても繊細ですぐに壊れてしまいそうなくらい。スッとした顔立ち、サラサラの髪。僕は君に恋をした。


 ふわっ


 やわらかな風が吹いた。本のページはパラパラと音を立ててめくれあがった。

 1枚のしおりが僕の足元に落ちた。

 君は無言でそれを拾うとすぐに席に戻り、本を再び読み始める。ちらりと見えた本のタイトルは『恋』。僕の鼓動は高鳴った。


 学校帰りに書店に寄りあの小説を探す。手を伸ばして一つ一つ小説のタイトルを確認しながら見ていく。


 あっ!


 手と手がぶつかった。隣を見ると君が立っていた。

「ごめん」

 君は謝ると笑顔で「君も小説を読むの?」と続けた。

「ま、まぁ……」

 はっきりしない返事を返し、僕はその場を後にした。


 翌日も僕は君を見つめていた。ただ見つめるだけしかできなかった。言葉に出してしまうと、この感情が消されてしまうと思った。だから、今日も僕は君を見つめるだけ。それだけで満足だった。でも――。


「付き合って欲しい」


 一瞬何を言われたかわからなかったが、しばらくしてようやく頭が現実に追いついた。


「はい」


 僕はドキドキする胸をおさえ、そう答えた。





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君と、いつか、 とろり。 @towanosakura

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