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 放課後の生徒会室、今日は珍しく一人で活動の準備をしていた。いつもは舞と一緒なのだけれど、舞は今日は風邪でお休みだ。

 書類整理をしていると、ドアが乱暴に開いた。響子が血相を変えてそこに立っている。響子は真面目で優秀な、生徒会書記の一年生だ。舞のファンの一人でもある。普段おとなしい彼女にしては今の様子は珍しい。


「舞会長が……解任、されました……」


 ――え?

 私は耳を疑った。

 舞が……懐妊!?


「私は舞会長のことを本当に尊敬しておりました。ですから今回は非常に残念です」

「それって本当なの?」

「はい。私もその場にいましたから」


 その場にいた!?

 3P!?

 私の知らない所でいったい何があったの!?


「あなたは大丈夫なの?」

「? 私は何もありませんけど……」


 3Pということは愛ゆえに、というより快楽を求めて? ってどっちにしろ私という彼女が居るんだから大問題だ。


 もしかして舞の隠し事ってこのこと?

 なに?

 やっぱり女同士じゃ物足りなかったってこと?

 本物じゃなきゃ嫌ってこと?

 私よりもいい男って誰?

 ていうかなんで私じゃなくて響子を誘ったの?

 そういうところだけ私を大事にしてる風?

 それに舞も舞だけど男も男。何てことをしてくれたんだ。私の舞に。まだ高校生なのに。


「こういうこと聞くのはアレなんだけど……、いったい誰が?」

 誰だろうとタダじゃ置かない。ボッコボコに殴り倒して崖から海に突き落としてやる。


「決めたのは先生の皆様方です」

 無責任中出しを決めたのは先生みんな!? 3Pより遥かにすごい!


「……それは、何人くらいなの?」

「正確には記憶しておりませんが、十人は居たかと思います」

 乱交だわ! いったい誰のせいかわからないじゃない! 


「その場に居なかった先生方は他のお仕事があったようです」

 え? 何? 勤務時間中に乱交してたの? 余計ヤバくない?

 いや、そもそも大前提として、

「なんで避妊しないのよ!」

 ていうか生徒に手を出すな!


「否認……? 特にする必要があるように思えませんが」

 とんでもない倫理観の持ち主だ。響子、あなたそんな人だと思ってなかった。そんな丁寧な口調で装って本当はそんなこと考えてたなんて。見損なった!


「ふーん。あなた、その場を楽しんでたんだ?」

「なんでそんなこと言うんですか?」


 響子の声には怒りが含まれているように聞こえた。

「じゃあ、なんで止めなかったのよ」

「確かに私は見ていることしか出来ませんでした」

 この人、いきなりお預けされたとか告白してきたんだけど。

「その場は口に出し辛い雰囲気だったんです」


 知らねぇよ。

 フェラで出したら盛り下がるとでもいうのか? 

 ていうか口か中かの二択なのか? 

 そもそもゴム付ければ済む話じゃねぇのか。なんで生なのは揺るがないんだよ。


 ――いや、ゴム付けても彼女は明け渡さないけど!?


「言い訳だと分かってます。でも私一人言ったところで、何も変わらないと思いませんか?」

 そりゃ乱交で女一人イッたところで何にもならないのは分かるけど。でもイッて継続不可能な状態にして乱交を終わらせる発想はなかった。そこは普通に止めようとして欲しかった。見ているだけでイクのも難しそうだし。


「それで決められた後、行きなさいと言われて従ってしまったんです」

 見ているだけだったのにイキなさいと命令されたらイケるの!? Mかよ。ていうか結局イクんかい。要は自分だけお預けされてるシチュエーションが欲しくて止めなかっただけじゃねぇか。


「自分でも自分を恥ずかしく思います。罵りたければどうぞそうしてください」

 やっぱりMだったか。言葉責めもいける口か。どんどん知りたくなかったことを知ってしまう。

「でもそれだとやっぱり楽しんでたんじゃないの?」

「どこがですか!」

 響子は顔を真っ赤にした。


 言葉だけじゃ足りなくて、ちんちんが欲しかったってこと? 知らないよ、あなたの不満なんて。

 響子はさらに何か言いたげだったが、ため息をついた。だいぶ落ち着いた様子に戻った。


「……その後、会長はあなたに決まったんですよ? 次は香織先輩、貴女なんですよ? 貴女で大丈夫なのか不安になってきました」

 ――え? 次、御開帳するのは私? 大丈夫なわけないでしょうが。


「絶対に嫌」

「何言ってるんですか? あなたは副会長なんですよ? 次はあなたに決まってるじゃありませんか」 

 なんで?

 私の知らない生徒会業務でもあったの?

 エロ漫画か?


 ――いや待て、ということは、舞は立場上仕方なく先生の相手をしていたんだね? 響子とは違って。 

 信じてたよ舞。あなたは私を愛してるって。


 でも、そうなると余計先生たちが許せない。舞の仇を取ってやる。


 怒りのせいで勢い余って職員室に突撃しそうになったけど、よく考えてみたらここで職員室に乗り込んでも何の成果も得られないだろう。私一人に出来ることはあまりに小さい。私が今向かうべきは警察だ。そして証人が必要だ。


 私は響子に用事が出来たと言って生徒会室を後にした。

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