第6話 恋は まぼろし

  遠く 南の島へ

  あなたの汗も青春も

  土から匂ってくる故郷へ

  ついてくるかと聞かれたから

  終着駅のステップで

 「ええ」と 振りかえってしまった


  行き着く先は ここだけなのに

  最後の一歩が 宙吊りのまま


  誰の許しがなくてもいい

  ふたりだけで 生きようと言われたから

  物悲しくて 黙ったわたし……

 「ほんとうに 幸せなの? 」と 振り向いたら

  淋しい目をした 自分をみつけてしまった


  あなたの愛する南の島へ

  どうぞ 連れて行ってください

  はちきれそうに泣き叫んでいる わたしの心

  お願いだからもぎ取って 持っていってください


  わたし

  想い出のパン かじっても

  生きてゆきますから


 (気高く優しい想い出の少女に 捧げる)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る