第4話 祈り ささげて

  わたしは

  岩肌だらけの谷間に咲いた

  ひともとの野の花に なりたい


  無骨なひげ面の 山男の

  心の隅に咲きつづける やさしい花に


  目をそらせば 不確かな記憶に埋もれるけれど

  ほんの少し残っている ぬくもりの幻影に

  わたしは なりたい


  傷ついた岩肌を 隠してあげるなんて できないけれど

  黙って寄り添うことなら できると思うの


  ただ ともにいるだけで なんの力になれなくとも

  おなじ景色を見 おなじ風にふかれて


  あなたと おなじ時の河を みつめていたい

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