雨音メロディー

第1話

　今日も雨が降っているね。

　空は厚い雲に覆われているね。

　君の気分も、この空模様のように暗くなっているね。

　でも、よく耳を澄まして見て。その目で色んなものを見てみて。

　ほら…雨が降っているから、紫陽花にひっそりと住んでいる蝸牛さんが顔を出しているよ。

　ほら…池の水面（すいめん）に、いくつもの波紋が出来ているよ。

　耳を澄ましてみて。

　聞こえる？

　この音を。このメロディーを。

　ぽっちゃん…ぽっちゃん……

　何処かで、雨水が垂れているみたいだね。

　カン…カン…カン……

　何処かで、雨水を空き缶が拾っているみたいだね。

　ぽっちゃん…ぽっちゃん…

　カン…カン…カン…

　ぽっちゃん…ぽっちゃん…

　カン…カン…カン…

　これは、自然が生み出すメロディー。

　これは、ただ一つのメロディー。

　ね、こんな空模様でも楽しみが沢山あるでしょう？

　だから、そんな顔をしないで。

　ほら、また外を見て。

　子供達がカラフルな傘をくるくると回しているよ。

　子供達が長靴を履いて、水溜まりで遊んでいるよ。

　ぽっちゃん…ぽっちゃん…

　カン…カン…カン…

　ぽっちゃん…ぽっちゃん…

　カン…カン…カン…

　雨音を聞いて、周りの風景を見てみて。

　まるで、雨の中のミュージカルみたいだね。

　ぽっちゃん…ぽっちゃん…

　カン…カン…カン…

　ぽっちゃん…ぽっちゃん…

　カン…カン…カン…

　あ、ねぇ見て。

　ほら、空を見上げてみて。

　空に光が射しているよ。

　空に青空が見えているよ。

　どうやら、もう、雨は終わるみたいだね。

　梅雨がもう明けるよ。

　僕の役目はこれで最後。

　大丈夫。僕は悲しくないよ。

　だって僕は、君を笑顔にする為に生まれた、てるてる坊主だから。

　雨の日でも楽しみを教えてあげる、てるてる坊主だから。

　また、雨の日になったら会おうね。