第87話 いもうとがちゃ(いもうと11)

 吾輩はネコである。

 名前はちび太。



「お、お兄ちゃん近いよ……」

「俺は気にしないよ」


「わ、わたしは気にするし……今日ちょっと暑くて汗かいたし……」

「そんなの関係ない、いいから答えを聞かせてくれ」


「答えってそんな急に言われても……」

「どうしようもないくらいに欲しいんだ。身体が、心が求めているんだ。な? いいだろ? 兄妹なんだからさ」


「兄妹でもだめだもん……」

「まったく聞き分けのない子だな? 何が不満なんだ?」


「だってそんな……こ、こういうのはちゃんと話しあってから……」

「だめだ、今すぐに欲しいんだ。我慢できないんだ。お前だって、できたら嬉しいだろ?」


「それはその、できたら嫌じゃない……嬉しいけど……」

「ならいいじゃないか」


「あ……う……」


 遊びに来たいもうとを激しく壁ドンして迫っているご主人様。

 いったい何が起こったのかと言うと――、


「頼む、この通り! お前が持ってる『それ』があればコンプできるんだよ! シークレットだって出てるんだよ! だから頼む! お前の持っている最後のノーマル、『それ』が揃えばフルコンプできるんだよ! 頼む、妹よ! 後生だからそれを兄に譲ってくれ!!」


 いもうとが話題の種にと持ってきたのが、先日ご主人様が6000円突っ込んでコンプリート出来なかった猫フィギュアの最後の一つだったのだ……!


「だってわたしだって、集めてるんだもん。あ、そうだ! じゃあお兄ちゃんがシークレット出してよ? そしたらわたしコンプリートだよ」


「おいこらなに馬鹿言ってんだ。シークレットとノーマルをトレードとか、お前それ鮫トレっていうんだぞ!? お前は鬼か、悪魔か!?」


「そんなこと言ったって、わたしだってそれ1個しか持ってないし」


「お前最近よくうちに来てるだろ? うちでフルコンプを眺めてればいいじゃないか」


「それとこれとは話が別だもーん!」


「そんないけず言うなって、な、な? なんならほらこっち。こっちのはいっぱいダブってるから2個でも3個でも4個でもやるぞ。特別大サービスだ」


「や、同じの2個も3個もあってもしょうがないし……」


「なんでもいう事聞くから、な? な?」


「つーん」



 ――などとわいわいやっているご主人様といもうと、相も変わらず仲のいい兄妹なのだった。

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