第55話 さらだ

 吾輩はネコである。

 名前はちび太。



「俺は野菜を摂取しなければならない」


 藪から棒にご主人様が言い出した。

 なんでも先だっての健康診断で、食生活の改善を指摘されたそうな。


「俺は料理ができない。包丁を扱うスキルも人並み以下だ。かといってカット野菜はコスパが悪すぎる。あんな高額なものはとても買えない。よって俺が選択するべきは、包丁を使わない野菜料理である」


 そう言ってご主人様は野菜を取りだした。


「まずレタスをちぎる。レタスは包丁を使わない。手でちぎるのがマストだ」


 いたってまともな出だしだった。

 これは期待できそう――、


「次にキャベツの葉を適当にもぐ。どうせ食べたら一緒だ。いちいち千切りにする必要はない」

 ……それはどうだろうか?


「最後にきゅうりを半分に折って……よし、サラダの完成だ!」


 レタスはいいとして。

 もいだだけのキャベツの葉っぱ、真ん中で折っただけのきゅうり……。


 これを……この「自称・サラダ」を料理と呼んで、果たしていいものだろうか?


 確かに火も刃物も使わないことで、失敗のリスクは限りなくゼロ。

 料理ド下手なご主人様のナイスアイデア……いやさすがにこれはどうなのだろうか?


 そして見事なまでに緑一色だった。

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