第54話 じーーーーー

 吾輩はネコである。

 名前はちび太。



「じーーーーーー」

「すっ…………ちらっ」


「じーーーーーー」

「すっ…………ちらっ」


「じーーーーーー」

「すっ…………ちらっ」


 いつものようにベッドで毛づくろいしていた吾輩。


 キーボードを打つ手が止まりふと振り返ったご主人様と、目と目があってしまったのだった。


 「じーーーーー」っと見ているのが吾輩で、「すっ……」と目線を逸らすのがご主人様である。


 目を逸らすのは、猫と目が合った飼い主の義務であるからして。


 しかしご主人様はというと、目を逸らした振りをして何度もこっちを見ては、その度に吾輩と目が合ってしまい、いたずらが見つかった子供のようにばつが悪そうな顔でまた目を逸らすのだった。


「じーーーーーー」

「すっ…………ちらっ」


 さらに何度か繰り返したのち。

 吾輩はご主人様の視線をスルーして、こてんとベッドで丸くなったのだった。


 視界の隅っこで、ご主人様がちょっとさみしそうにしていた。

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