第52話 ぶんどど

 吾輩はネコである。

 名前はちび太。



「ブーン! ブーン! ドドドドドド! ズガーン!!」


 えー。

 ご主人様が一体なにをしているのかというと。


 先日作ったプラモデルで一人遊びをしているのだった。


 ブーン! と飛ばして、

 ドドド! と撃つ。


 略して「ぶんどど」という紳士の嗜みなのだそうだ。

 プラモデルを動かしては、飛んだり撃ったりの効果音をタイミングよく口で入れるのである。


 さらにご主人様はというと、


「ここは俺が引き受ける、お前は先に行け――!」

「でも――」


「大丈夫だ。ちゃんと後から行くからよ」

「本当?」


「おいおい、俺が今までお前に嘘をついたことがあったか? 分かったらさっさと行って、魔王を倒すっていうお前のお役目を果たしてこい」

「アニキ――うん、わかったよ!」


「やれやれ、勇者だのなんだのもてはやされてもまだまだ子供なんだからよ……にしてもこの数……まったくモテる男はつらいねぇ。でもよ、『勇者のアニキ』なんてもんを名乗っちまった調子こきの死に場所としては、これ以上なく相応しいってなもんだ――!」


 執筆で培ったストーリーメイクの能力をこれでもかと発揮して、一大戦記物をロールプレイングしていたのだった。


 そう。

 これはご主人様と吾輩以外の誰も知らない、ご主人様の童心がそのままに描かれた、一人と一匹だけの物語――。

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