第33話 ちょこ(いもうと6)

 吾輩はネコである。

 名前はちび太。



「お兄ちゃんってチョコ好きなの? いつも食べてるよね? しかも同じやつばっかり。飽きないの?」


「ふふん、作家ってのはな、だいたいお気に入りの甘味があるもんなんだよ。創作にはエネルギーを使うからな。俺の場合はそれがチョコってわけだ」


「ふーん」


「おま、自分から聞いてきたくせに、また塩対応かよ……いい加減、お兄ちゃん泣くよ!?」


「はいはい。じゃあ質問、やたらとちみっとずつ食べてるのも作家の習性なの?」


「習性って動物じゃないんだから……まぁなんだ、先立つものがね? ほら、チョコってけっこう高いだろ? これも一番コスパがいいやつでさ……」


「よ、予想外に切実な答えだったし……」


「おっとそんな顔するなって。チョコだけにちょこちょこ食べてる、なんてな、あはは」


「お兄ちゃん、親父くさいよ……」


「なん……だと……?」


 「いもうと」の一言に、ご主人様が固まってしまった。


 夢を追いかけ、まだ若い気分でいるご主人様にとって、今の一言はかなりショックが大きかったようだ。


 吾輩はあぐらをかいたまま固まるご主人様ところまで行くと、その上にちょこんと座って、毛づくろいを始めた。


 凹んだご主人様を少しでも元気づけてあげるのも、同居人の吾輩の務めなのであるからして。

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