第29話 たいたにっくとわがはい

 吾輩はネコである。

 名前はちび太。



「ちび太、いいこと考えたんだ」


 ご主人様はそう言うと、窓を開けた。

 そして後ろから吾輩の脇に手を入れて抱っこする。


 ――風が強く吹いていた。


「やっぱ1人よりも2人の方が雰囲気出るよな」


 そのまま風を感じて佇むご主人様と吾輩。

 タイタニックごっこが、いつの間にか進化していた。


「にゃー、ふぁー、うぇあえーばー、ゆーあー」


 いつにもましてノリノリなご主人様に抱かれて、何をするでもなく風をたっぷりと感じる吾輩。


 数分だらーんと脇抱っこされ続けてから、


「よし……やる気がわいてきた」


 再び何事もなかったかのように執筆を始めたご主人様を、ベッドの上で丸くなって身体を温めながら見守る吾輩であった。

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