第21話 こうじえん

 吾輩はネコである。

 名前はちび太。



「ここ、『石』と『岩』で表現迷うな……『岩』のほうが大きいのは分かるけど……サイズ的な違いはどこだ? よし、広辞苑で調べるか……」


 今日も今日とて、ご主人様は小説を執筆していた。


「なになに……『石』とは『岩より小さく、砂より大きい鉱物質のかたまり』。ふむ……まぁそうだよな。それは知ってる」


 小説の執筆には言葉の定義というものが肝要であって、そのためご主人様はよく「こうじえん」を引いては言葉の意味を調べていた。


「じゃあ次は『岩』を調べるか。なになに……『岩』とは『石の大きいもの。特に、加工せず表面がごつごつしているもの。岩石』。まぁそうだよな、知ってるよ。じゃあ『石』を調べよう――ってこれ完全に循環してるじゃん! あと説明の中に岩石って書いちゃってるし!? もうそれ岩と石の両方じゃん!? それでいいのか広辞苑!?」


 作家を目指すご主人様の孤独な戦いは、今日も続く――。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る