第6話 とんかつはんがく

 吾輩はネコである。

 名前はちび太。



「ほら見てみろ、今日はとんかつが半額だったんだぞ」


 ご主人様が職場の「すーぱー」の袋から、自慢げに晩御飯のおかずをとり出して見せてくれた。


「とんかつはたいてい3割引きで全部無くなるからな。半額まで残っているなんて、今日はいい日だ」


 ご主人様は嬉しそうにそう言うと、炊飯器からどんぶりにご飯をよそい、その上にとんかつを乗せてソースをかけて食べ始めた。


「やっぱりかつ丼は最高だな!」


 吾輩はというと、晩御飯を食べるご主人様があぐらをかいた足の上に乗って、何をするでもなくくっついて、ごろごろと喉を鳴らすのだった。


 ご主人様はご飯を食べながら、時おり頭を撫でてくれるのだ。


 それにしてもとんかつが半額なだけでこうまで喜ぶとは、ご主人様ときたらどうしようもなく小市民であることよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る