第24話 ………気を付けないと

ボクがアフレコスタジオに着くとスタジオには愛華さんと赤見監督が何か話していました。恐らくアフレコのオーダーでしょう。愛華さんはボクと同じで明日からキャンプ参加です。


「白音ちゃんゴメンね。折角のキャンプなのに」


ボクがスタジオに入ってきた事に気づいた赤見監督が申し訳なさそうにそう言いました。愛華さんは赤見監督の声でボクの方に向きました。


「いえ、大丈夫です。明日からでも楽しめますから」

「あれ?白音ちゃんも明日からキャンプ参加なんだね!私もなんだよ!」


ボクと赤見監督がキャンプの話をしていると愛華さんが話に入って来ました。愛華さんはキャンプ参加日がボクと同じこと知らなかったんでしょうか?ボクは社長から聞いていたので知っていますけど。


「赤見監督そろそろ始めましょう」

「そうだね」


ボクが始める様に言うと赤見監督はスタジオから出て隣の部屋に入った。それからアフレコが始まりました。今回のアフレコはアニメのアフレコじゃなくてCMのアフレコです。


アフレコは恙なく終わり次の仕事はアニメのラジオだった。ラジオは事務所ではなく別の場所でやるから移動が必要だった。ボクは時間がないので急いで事務所の外に出てタクシーを捕まえて移動しました。


アニメのラジオはボクの他にも声優さんが出るのですがボクとは違う事務所の声優さん達です。同じ事務所の声優さんは居ません。ボク以外全員同じ事務所なんですよ。寂しいです。


「白音ちゃん!久しぶり!今日は事務所のキャンプだったんだって?」


ボクに話しかけてきたのは別の事務所ですがボクと同じ時期に入った御影空美みかげくみさん。歳はボクより3つ上です。ボクが初めてアフレコしたアニメで空美さんも初めてアフレコしたのでそこで仲良くなりました。


「はい。でも愛華さんも一緒で明日の昼まで仕事あるので大丈夫です」

「そっか」


その後アニメのラジオが始まって色々あったけど無事ラジオが終わりました。大変だったけど楽しかったです。ラジオが終わって事務所に帰って来たボクは原画室に行って原画を描き始めました。一条さんは居なくて一条さんの机の横に座っている人に聞いてみたら休憩しているらしいです。


それからボクは原画を集中して描いていたので気づいたら20時になっていました。一条さんも集中して描いているので声を掛けずにボクは家に帰りました。


ボクが家に帰ると何故か青葉ちゃんがリビングで寛いでいました。何で居るんでしょうか?中村達と一緒にキャンプに行ったんじゃないんですか?


「青葉ちゃん?何でいるんですか?キャンプは如何したんですか?」

「白音ちゃん1人だけだと寂しいと思ってね」


ボクが聞いてみると青葉ちゃんは笑顔でそう言いました。確かに何時もお姉ちゃんと音夏が必ずいるから家の中では少し寂しいですけど………

それからボクは自分の部屋に戻って着替えることにしました。


~着替え中~


リビングに戻ると机の上に美味しそうな料理が乗っていた。キッチンを見ると青葉ちゃんが居て如何やら作ってくれたみたいだ。


「これ青葉ちゃんが作ったの?」

「そうだよ。それより声如何したの?」


俺はそう言われて声が白音の儘だった事に気が付いた。気を付けないと父さんとか兄ちゃんとかにバレちゃう。


「………気を付けないと」

「何で声間違えるの?可笑しくない?」


青葉ちゃんは俺にそう言って首を傾げた。そうかな?俺は普通の事だと思うけど。まぁ声優じゃない人は可笑しいと思うかもしれないけど俺達声優は普通の事だろう。


「まぁいいや。早くご飯食べよ!」

「そうだな。お腹空いた」


俺はそう言って席に着いた。青葉ちゃんは俺の正面に座って一緒に食べた。青葉ちゃんが作ってくれた料理はとても美味しかった。また食べたいな。片付けをしながら青葉ちゃんが今日寝る場所を考えていたんだけど姉ちゃんから部屋使ってもいいって言われてたらしい。それなら心配いらないな。


「青葉ちゃん。お願いがあるんだけど」

「なぁに?」


青葉ちゃんが寝る部屋の心配は解決したけど今度は別の心配が出て来た。俺は朝起きれないんだよな。今日は姉ちゃんに頼んだけど青葉ちゃんに頼む分けないはいかないと思っていたけど如何しても起きれないから仕方なく起こしてもらう事にした。


「明日の朝7時半に起こしてくれない?」


俺がそう言うと青葉ちゃんは頭に"?"を浮かべた。そういえば青葉ちゃんには俺が朝弱いこと言って無かったっけ?言ったような気がするけど………


「俺、朝弱くて起きれないからさ」

「そうだったんだ。分かったよ!」


俺が理由を話したら青葉ちゃんは即答した。何で考えないの?少しは起こすか考えるよね?まぁいいか。青葉ちゃんなら姉ちゃん達と違って俺を起こす前に写真を撮る事はしないだろうし。


「ゴメンね。早く起きることになっちゃって」


俺は折角の休みなのに朝早く起きることになるからなんか申し訳なくて謝ったけど青葉ちゃんはポカンとしていた。


「大丈夫だよ。何時も休みの日でも変わらないから」



翌日


「鈴音ちゃん!起きて時間だよ!」


俺はその声で目を開けると目の前にスマホのレンズがあった。俺はスマホを見た瞬間溜息を吐いた。結局青葉ちゃんも姉ちゃん達と同じか………何時も言ってるけど止めて欲しいんだけど。


「姉ちゃん達にも言ってるけど起こす時に俺の寝顔を撮るの止めてくれない?」

「何で?」


俺が止めてくれるように言ったけど青葉ちゃんは聞いてくれなかった。まぁ姉ちゃん達と同じだから大体分かってたけどな。姉ちゃん達と同じだからもう一回注意しても聞いてくれないと思った俺は溜息を吐くしかなかった。

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