残り五日――四日
大輔が怪物に捕まった。
一瞬の出来事だった。
蛍か神流か、二人のどちらかが偽物かという議論を話しているとき、怪物が姿を現した。いや目撃した。
大輔に姿を変える怪物を。
とっさに、大輔が叫んだことで、ぼくは勢いよく逃げ出すことができたが、大輔は捕まってしまった。
日が暮れても大輔は戻ってくることはなかった。
ぼくらは口論していた。
大輔を置いていったのは、蛍偽物説を物理的に抹消するためとか、いい加減なものだ。あそこまで仲良くできたのに、それを怪物に襲わせて蛍偽物説を消そうとするなんてありえない。
ましてや、大輔がいなくなってかわいそうとか、寂しいとか思うはずなのに、「つかえねーな」と言っていた。
神流は明らかに黒だ。
でも、本人に直接言えない。
いえば、捕まってしまうからだ。
あと、三人。
生き残らなければ、後はもうない。
**
残り四日となった。
ぼくは神流に呼び出された。
神流はぼくを引き留めたいのか、胸を触らせ、「どう、感じるでしょ」と明らかに媚びを売るかのようにやり方が荒っぽくなってきた。
ぼくは神流の手を払い、蛍が偽物ではないという説を覆すことはなかった。
神流は何回も「私の話を信じてよ」と僻んでくる。
どこまで信用したらいいのかわからなくなってくる。
もう信用できる仲間は蛍だけだ。
でも、神流が言うとおり、蛍が実は偽物なのかもしれないと頭の中に横切る。不安が立ち上ってくる。どちらを信用すればいいのだろうか。どっちを裏切ればいいのだろうか。
ぼくは、迷う。
頼みの綱であった大輔はいない。
ましてや、変身する姿を見てしまい、ふたりを心から信用できなくなってしまってもいる。
ああ、早く帰りたい。終わらせたい。
ぼくの心は少しずつ蝕んでいた。
怪物という物体ではなく、心という怪物が蝕んできていた。
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