第14話 「どうもです。」

「どうもです~♪」


美代先生にたくさんの記者が集まっている。カメラのフラッシュが無数に光る。


「美代先生、「もったいない」に続き、「どうもです~♪」が、世界を平和にした日本語として、広まっていますが、どんな気分ですか?」


美代先生の口癖「どうもです~♪」が世界中で大流行している。宗教、人種、紛争を乗り越え「どうもです~♪」は、争いを止め、世界を笑顔に変えていく。


「んん~、いわゆる一つの、どうもです~♪」


元々、美代先生の営業用の挨拶だった「どうもです」が、なんで? どうして? こんなに広がったんだろう? と思う、美代であった。


「ありがとうございます。」

「キュル。」


国連の美代先生の「どうもです~♪ は地球を救う(⋈◍>◡<◍)。✧♡」講演会場で、記名をしてもらい、ご祝儀をいただく、受付をしている、みなみちゃんとパンパン。


「どうもです~♪」


この物語は、「どうもです~♪」が口癖で、決して感情はこもっていない歯科医師の女医と、このご祝儀を生活費に充てようと考えている歯科助手と、笹団子がたくさん食べられると喜んでいるパンダの、愛とロマンの物語である。



「どうもです。」


美代先生は、国連に着いた。


「あんたが、ドクター美代!?」


そこには世界保健機関WHOの事務局長が、本部のあるスイスのジュネーブから来日して待っていた。


「はい。美代です。」

「私は事務局長です。お会いできて、うれしいです。」

「こちらこそ、どうもです。」


美代先生は、形だけの挨拶に興味は無かった。日々の社会人生活で、散々、人間という者を見た来たからだ。事務局長は、早速本題に入る。


「ドクター美代、あんたは、「チョコキノコ」治せるのですか?」

「はい。」

「おお!」


世界保健機関の事務局長と、周りの関係者は歓喜の雄たけびを上げる。世界に広がったパンデミックの原因の新型ウイルス「チョコキノコ」を、日本の無名の若い女医が、治せるというのだ。


「おお! 神よ! 救世主を遣わしてくれて、感謝します!」


世界保健機関の事務局長やスタッフは、神に祈った。


「・・・。」


美代先生は、もう9万字超えてるんだから、あんたらのお祈りなんていらないよ。尺の問題があるんだから、と呆れている。


「ドクター美代! 早速、全世界に向けて、スピーチして下さい! 「チョコバナナ」は、治るんだと!」

「え!?」


美代先生は、え!? 私がするの? せっかく来たんだから、事務局長がすれば、あなたの手柄になるのに、私、目立つの好きじゃないんだよね、と困る。



「パンパン、おいしいね(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

「キュル(⋈◍>◡<◍)。✧♡」


みなみちゃんとパンパンは、大学病院の食堂で、お湯を沸かしながら、ちゃっかりと、カップラーメンを食べていた。


「備蓄食料って、すごいね~♪」

「キュル~♪」

「カップラーメン19個食べても、まだまだ食べ放題(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

「キュル(⋈◍>◡<◍)。✧♡」


助手とパンダの周りには、食べ終わって、空になったカップラーメンが36個も転がっている。みなみちゃんとパンパンは、ラーメン食べ放題を堪能していた。


「ピンポンパンポン~♪」


その時、病院の管内放送が流れ出す。


「ワ~イ~♪ 20個目(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

「キュル(⋈◍>◡<◍)。✧♡」


みなみちゃんとパンパンは、管内放送は耳には聞こえなかった。ひたすらラーメンを食べている。


「世界保健機関の事務局長です。みなさん、もう安心してください。世界保健機関から緊急放送をお届けします。これより世界中で、パンデミックを引き起こしている新種の病原菌「チョコキノコ」の治療に成功した、日本のナンバー1、ナンバー1ドクター、ドクター美代がスピーチしてくれます。」


美代先生の初講演会は、大学の講堂で細々としたものではなく、国連で世界中に向けて、発進されることになってしまった。


「ゴックン。」


美代先生は、壇上にやって来る。喉で唾を呑み込む。大役とは無縁のズボラな美代先生が、緊張しない訳は無いのだ。なにか喋らなければいけないと思えば思うほど緊張して何もしゃべれない。


「・・・どうもです。」


美代先生が口から発した一言目が、口癖の「どうもです。」だった。


「あ!? 美代先生だ!?」

「キュル!?」


みなみちゃんとパンパンは、「どうもです。」で美代先生だと気づいた。しかし、カップラーメンを食べる手は止まらなかった。


「・・・!?」


国連の記者会見場にいる人、テレビ、ラジオ、ネットで見たり聞いたりしている人は、「どうもです。」の意味が分からず、会場は不思議な空気に包まれる。


「どうもです。」


美代先生が「どうもです。」の2発目を発する。


「先生、緊張してるね。」

「キュル。」


みなみちゃんには、声の感じで美代先生が緊張しているのが分かる。


「ザワザワ!?」


日本人には挨拶と分かるのだが、世界の国々には、日本語なので、何を言っているのか、理解できなかった。「どうもです。」を聞いた人々は、なんなんだ!? と試行錯誤する。


「どうもです~♪」


美代先生は、緊張が解けるまで、「どうもです。」で乗り切ろうと決めた。


「調子に乗ってきた・・・。」

「キュル・・・。」


みなみちゃんとパンパンは、美代先生の緊張が無くなったのが分かる。


「どうもです。」


世界中の人々が、謎の言葉「どうもです。」の意味が分からないので、とりあえずオウム返しをして、「どうもです。」を言ってみた。


「どうもです(⋈◍>◡<◍)。✧♡」


美代先生は、少し悪乗りしてきた。会場の世界保健機関のスタッフや記者が「どうもです。」で、返事をしてくれたので、気持ちが落ち着き、緊張が解けてきた。


「どうもです~♪」


会場の人々、世界中の人々も、魔法の言葉「どうもです。」に、何か重大な発表があるのではと緊張していた心が、笑顔で明るい気持ちになっていた。



「ええ、私は、美代です。歯科医師をやっています。」


美代先生のスピーチが始まった。


「世界で流行っているパンデミックの病原菌「チョコキノコ」ですが、私は治しました。スピーチ後、私のお世話になっている、渋谷大学病院で、世界に生中継で治療しているところを公開したいと思っています。」


美代先生は、信憑性のために、先に結論から言った。


「治したのも私だし。美代先生は、いつも逃げてるだけじゃないですか!?」

「キュル!?」


みなみちゃんは、やっぱり、そう思っていてもおかしくない。


「多くの患者さんが、難病だと、私の元にやってきました。歯から「イチゴ」「マカロン」「パンダ」が生えてきたと、時には、虫歯ランド遊園地なるものまで、口の中に建設されていることもあり、私に助けを求めてきました。私は、それを普通の虫歯だと思い、普通に治療しました。そしたら、治せました。」


美代先生は、今までの新種の病原菌との戦いの日々を語る。


「美代先生は、私がいなかったら、何もできないじゃないですか!」

「キュル!」


みなみちゃんは、半分キレている。パンパンも普段の様子を知っているので、みなみちゃんに共感する。


「私が言いたいのは、「チョコキノコ」も普通の虫歯なのです。普通に歯を磨いていれば、感染することもありません。現に、新種の病原菌に感染している人は、歯磨きをせずに、寝てしまう人々だからです。世界のみなさん、歯を大切にしましょう。」


美代先生は、歯科医師として、「歯を大切に。」「ちゃんと歯磨きをしよう。」と言っている。


「私が歯科医師だったら、今頃、私がスピーチしてるのか?」

「キュル。」

「ドクターみなみだよ~♪」

「キュルキュル~♪」


みなみちゃんは、歯科医師に憧れている。どうしても「もしも私が歯科医師だったら・・・。」と考えてしまう。


「おお、歯を大切にするぞ!」

「ちゃんと歯を磨こう!」

「ドクター美代の言うとおりだ!」


世界中の人々は、美代先生の言うことに共感した。歯磨きをすれば、新種の病原菌に感染しないのだ。平和に暮らしたいという人々の温かい気持ちが、地球を覆い輝かせる。


「私は、貧乏な生まれです。大学も奨学生として入りました。」


美代先生が、何か、決心したみたいに、自分の身の上話を始めた。


「私は、多くの人々の歯を健康にしたいから、歯科医師なり、どんな病原菌の治療にも挑戦しました。だから、今回の「チョコキノコ」も治すことができました。」


美代先生は、言葉を選んで丁寧にスピーチをしている。


「先生、嘘ばっかり~♪ 金の亡者のくせに~♪」

「キュルキュル~♪」


みなみちゃんは、普段のズボラで、セレブになりたい、金の亡者の美代先生を知っているので、嘘ばっかり言って、と笑っている。それにパンダも頷く。


「それは、こんな私を支えてくれる、最高の助手がいてくれたからです。」


美代先生は、清々しい顔で、前を向いて喋っている。


「え。」


みなみちゃんのラーメンを食べる手が止まる。


「ありがとう、みなみちゃん。」


美代先生は、笑顔で助手にお礼を言うと、一礼して、壇上から去って行く。


「・・・。」


みなみちゃんは、まったく動かなくなった。


「キュル?」


パンパンが、みなみちゃんの顔を覗き込む。


「・・・う・・・う。」


みなみちゃんの瞳から涙がこぼれていた。涙は、食べているカップラーメンのスープにポタポタと落ちて混ざっていく。


「ズボラなくせに・・・う・・・う・・・うええええん!」


みなみちゃんは、涙を止めることが出来なかった。自然に出てくる涙は、感情の高まりと共に、勢いを増していく。


「美代先生・・・ズルい・・・うええええん!」


みなみちゃんは、予想外の美代先生の感謝の言葉に感動して、泣き崩れてしまう。


「キュル。」


パンパンは、ティッシュを持ってきて、みなみちゃんに渡そうとする。


「うええええん!」


しかし、みなみちゃんは、大泣きしていて、それにも気づかなかった。



「ああ、疲れた、疲れた。」


美代先生は、控室まで帰ってきた。


「いい演説でしたよ。」

「あう。」


安倍さんとイスラちゃんは、感動している。


「私の助手は、がんばりやさんだからね。」


美代先生は、みなみちゃんのことを大切にしている。


「それでは、すぐに大学病院に移動して、チョコキノコの治療の様子を全世界に生中継しましょう! これでパンデミックを終わらせることができます!」

「あう!」


人間、自分の目で確認するまで、信じないものである。


「ええ!? その前に何か食べさせて!?」


美代先生は、何も食べていな子なのである。ギュルギュル! お腹は鳴っている。


「ダメです! すぐに車に乗ってください!」

「あう!」

「ギャア!?」


美代先生は、現れた黒服の2人に左右から挟まれて、連行されていく。


「お腹空いたよ!」


美代先生の声はかき消された。美代先生は、黒い車に放り込まれて、渋谷大学病院に向けて車は出発した。



「お腹空いた・・・。」


美代先生は、渋谷大学病院に戻ってきた。


「美代先生、早く診察室に向かってください!」

「あう!」


日本秘密庁の安部さんとイスラちゃんがピッタリとマークしている。


「はあ・・・。」


美代先生は、ご飯を諦めて、診察室に向かう。



「んん?」


移動中、美代先生は、不思議な光景に遭遇する。


「奥様だ!」

「美代先生だ!」


避難してきた人々が、美代先生を神のように手を合わせて拝み、羨望の眼差しで見つめてくる。


「な、なんだろう?」


美代先生は、戸惑っている。大学病院にいた頃と、何か違う違和感を感じる。


「みんな、あなたのことを救世主だと思っているんですよ。」

「救世主!?」

「世界中の人々が、なぜの細菌に恐怖に包まれていたのを救ってくれるんですから、あなたのことが神に見えるでしょうね。」

「神ですか?」


美代先生は、安倍さんの言うことを、ご冗談を、っと思っている。


「ほれ。」

「え?」


イスラちゃんが、美代先生を礼拝の儀式で崇めている。中東出身のイスラちゃんは、神に対する信仰心が強いのだ。


「あう~♪」

「ははははは・・・。」


美代先生は、何と言えばいいのか、分からなかった。足早に診察室を目指した。



「ただいま。」


美代先生は、診察室にやって来た。診察室は、世界保健機関の職員や、生中継をするスタッフなど、たくさんの人がいた。


「先生、おかえりなさい。」

「キュル。」


白衣姿のみなみちゃんとパンパンが迎えてくれた。


「あれ? みなみちゃん・・・」

「え!?」


みなみちゃんは、ドキッとした。目が赤いので、美代先生のスピーチに感動して、泣いてしまったのがバレるのではないかと思った。


「少し、太った?」

「え!?」


予想外の指摘に、みなみちゃんは目が点になる。


「パンパンも、お腹でてるぞ!?」

「キュル!?」


パンダも戯けて見せる。


「まさか!? 非常用のカップラーメンを食べまくったんだな!?」

「23杯食べましたよ(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

「キュル(⋈◍>◡<◍)。✧♡」


みなみちゃんは、ドキドキを誤魔化すように、ドヤ顔で言う。パンパンもつられてドヤ顔である。


「いいな・・・、私まだ、何も食べてない。」


美代先生は、空腹で死んでしまいそうなくらい、フラフラである。


「先生、早く終わらせて、食堂に行きましょう。」

「キュル。」


助手とパンダが慰める。


「そうだね。パパッと終わらせて、ラーメンを食べるぞ!」


美代先生が最後の力を振り絞り立ち上がる。


「みなみちゃん、はい、新しいシークレットライセンス。」

「ありがとうございます。」


みなみちゃんは、安倍さんから新しい日本政府公認の歯科助手でも、歯の治療ができるライセンスカードをもらった。



「そういえば、みなみちゃんと一緒に治療するの初めてだね。」

「そういえば、そうですね。」


今まで2人で一緒に歯の治療したことが無かった。原因は、美代先生が逃げるか、みなみちゃんが新種のウイルスの洗浄に疲れ切ってしまうからであった。


「今日は、カメラも回ってるから、医療行為は私がやるから、みなみちゃんは、歯の洗浄だけ、しっかりやってね。」

「はい、先生。」


美代先生とみなみちゃんの息はピッタリである。


「さあ、行こうか。」

「はい、美代先生。」


美代先生は白衣を着る。2人は身支度を整えて、診察室に向かう。



「周りのプレッシャーがすごいね。」


診察室の中は、人間とカメラだらけだった。美代先生は、顔が強張り、手足が震えて、その圧力に屈しそうである。


「大丈夫ですよ、美代先生ならできますよ!」


みなみちゃんは、美代先生を励ます。


「みなみちゃん。」

「先生には、このみなみが付いていますよ~♪」

「みなみちゃん・・・。」


歯の治療のスキルに自信の無い美代先生であるが、助手のみなみちゃんに励まされて、勇気をもらう。


「そうだね。みなみちゃんがいてくれれば、大丈夫だ!」

「先生とみなみなら、無敵ですよ(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

「ハハハハハ~♪」


美代先生の顔に笑顔が戻り、肩が重かったのが軽くなったように感じる。


「よし、さっさとやって、ラーメンを食べに行こう!」

「まだまだ食べますよ(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

「本当に太るよ・・・。」


いつもの調子が戻ってきて、美代先生は手を上げて、今から治療を始めると合図を世界保健機関の職員医に送る。カメラマンたちも気合を入れて、撮影を始める。


「みなみ、いきます!」


まず、みなみちゃんが歯の洗浄を始めた。新種の病原菌「チョコキノコ」は、歯科医師の虫歯治療ではなく、本来なら歯科衛生士の仕事だが、歯の洗浄をする方がいのだ。みなみちゃんは、歯科助手だが、歯の治療が許されるシークレットライセンスを持っている。


「みなみちゃん、手際がいいね。」

「綾ちゃんのチョコキノコに比べれば、楽勝です~♪」


みなみちゃんの洗浄はすばらしく、手際良く、チョコキノコを洗い流していく。


「私にきれいにできない歯はない! クリーニング波動砲(⋈◍>◡<◍)。✧♡」


ジュバ!!! っと、歯から生えていたチョコキノコを取り外すことに成功する。


「すごいね、みなみちゃん。」

「みなみ、歯の洗浄が1番得意です~♪」


みなみちゃんは、自分の仕事を完璧に終えた。


「よし、やるぞ!」

「美代先生、がんばってください!」


今度は美代先生が虫歯の治療に取り掛かる。


ウイーン! ギギギギギ! ギギギギギ!


まず虫歯になった黒い部分を削り始める。美代先生の顔は真剣で、いつもの、ズボラな美代先生の姿はそこにはなかった。


「よし、削れた。みなみちゃん、樹脂。」

「はい、先生。」


みなみちゃんは、美代先生に虫歯を削った歯の穴を埋める、レジンと言われる樹脂を渡す。美代先生は「チョコキノコ」が生える原因だった虫歯を削り取ってできた穴に、樹脂を流し込んで、きれいな歯にしていく。


「できた!」


美代先生は、額に汗をかきながらも、世界を恐怖のどん底に落としている、パンデミックの原因である新種のウイルス「チョコキノコ」を除去し、虫歯もきれいに治すことに成功した。


「やりましたね! 先生!」


美代先生とみなみちゃんは、治療の成功を喜んで抱き合う。


パチパチパチパチ!!!


世界保健機関の職員たち、カメラ放送のスタッフたちから、スタンディングオベーションの拍手が送られる。診察室は、日本の若い歯科医師の女医と歯科助手を祝福する。


「これで世界は救われるぞ!」


世界保健機関WHOの事務局長は、日本の素晴らしい医師が、世界中に治療の仕方を示した勇気に感激した。これで未知の病原菌「チョコキノコ」パンデミックは終息すると確信した。


「すぐに手術の準備を!」

「治し方が分かれば、治すことが出来るぞ!」

「うちの病院に、チョコキノコ専門外来を作るんだ!」


今まで、治療の仕方が分からなかったり、保身のために治療してこなかった、世界の歯科医師が、世界中の大病院が、「チョコキノコ」の治療に取り掛かり始めた。


「やりましたね! 先生!」

「やったよ! みなみちゃん!」


手術を終えた美代先生は、普段のズボラで金の亡者の雰囲気は全くなかった。かといって、自分が世界を救う偉業を成し遂げた、という雰囲気も全くなかった。そこあったのは、ただの歯科医師として、虫歯に困っている人を助けたいという医師の姿だった。


みなみちゃんも、美代先生に出会えて、美代先生に雇ってもらえて、美代先生の助手ができて、良かったと思っている。これも運なのか、運命なのかは分からない。それでも、みなみちゃんは、美代先生についていきたいと思っている。



「これで仕事も終わったし、ご飯が食べられる!」

「美代先生、お疲れ様でした。」


美代先生たちは、白衣を脱いで、私服に戻った。みなみちゃんたちは、食堂に向かっている。2人の顔には、仕事を終えた充実感がみなぎっていた。


「よし、ラーメンを食べるぞ!」

「みなみも食べますよ(⋈◍>◡<◍)。✧♡」


美代先生たちは食堂に着いた。


「え?」

「なに!? これ!?」


食堂には、パンダのパンパンと、世界保健機関WHOの事務局長と職員たち、治療の様子を生中継していた世界中のメディアのスタッフたち、ベテランのおばちゃん、東西北さん、おまけに安倍さんとイスラちゃん率いる日本秘密庁の黒服部隊までいた。全員でカップラーメンを食べている。


「なんで、あんたたちまで!?」

「日本秘密庁の職員は食堂を無料にしてくれる約束だ。」

「あう。」

「そういえば・・・。」


確かに、約束している。


「先生、さっさとラーメンをもらいに行きましょう。」

「そ、そうだな。」


美代先生たちが、ラーメンを取りに行く。


「ざ、在庫が無い!?」

「ええ!?」


備蓄されていた非常食のカップラーメンは1つも残っていなかった。


「俺のが最後だ。」


渋谷大学病院の院長の息子、渋谷ハチ太郎がカップラーメンを食べていた。


「ハチ太郎!?」

「美代、お疲れ様だったな。」

「おまえ、自分の病院の危機に隠れていやがったな!?」

「俺は、おまえにおいしい所を譲ってやったんだ!?」

「なにを!? 私のラーメンを返せ!?」


美代先生とハチ太郎は、取っ組み合いのケンカが始まった。美代先生の食べ物の恨みは怖いのだった。


「キュル(⋈◍>◡<◍)。✧♡」


そこにパンパンが、中身の入っている未開封のカップラーメンを2個持ってくる。


「私たちの分を取っておいてくれたのか!?」

「キュル(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

「でかした! パンパン!」


美代先生は、カップラーメンを受け取って大喜びである。


「パンパン、ありがとう~♪」

「キュル(⋈◍>◡<◍)。✧♡」


みなみちゃんは、ペットのパンパンを優しく抱きしめる。


「キュルキュル(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

「え、みなみに飼ってもらえて良かったて。」

「キュル(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

「パンパン、大好き~♪」


みなみちゃんとパンパンも仲良しさ。


「さあ! みなみちゃん、ラーメンにお湯を入れにいこう!」

「はい! 先生!」


美代先生とみなみちゃんが、カップラーメンを開けて、中のスープを出している。


「おお! ドクター美代!」

「事務局長!?」


そこに世界保健機関WHOの事務局長がやって来た。


「ドクター美代、あなたはスピーチも歯の治療すばらしかった。」

「どうもです。」

「ドクター美代のおかげで、パンデミックが収まり、世界は救われたよ。」

「どうもです。」


事務局長は、ドクター美代の活躍に感謝している。しかし、美代先生はお腹が

空いているので、どうでもよかったので、「どうもです。」を連発する。


「君が、ドクター美代のステキなアシスタントだね。」

「はい。みなみです。」

「アシスタントみなみ、君は良いドクターに巡り会えたね。」

「はい~♪」


みなみちゃんは、少しためてから、笑顔で美代先生に出会えて良かったと返事をした。いい先生、いい職場に恵まれて、みなみちゃんは、幸せだった。


「ドクター美代。」

「はい。」

「世界をパンデミックから救ったヒーローとして、これから記者会見だ!」

「ええ!?」


世界保健機関WHOの事務局長は、美代先生は、これから記者会見をするという。


「国連に戻るぞ!」

「おお!」


カップラーメンを食べ終わった、世界保健機関WHOの職員たち、世界のメディアのスタッフたち、護衛の日本秘密庁の職員たちは、立ち上がり移動を始める。


「ええ!? まだラーメンを食べていませんよ!?」


美代先生は、なにも食べていないので、お腹が空いている。


「ラーメンを食べるまで、私は動きませんからね!?」


美代先生は、手足をジタバタさせ、必死に抵抗する。


「連れていけ。」

「はい。」


日本秘密庁の安部さんが、屈強な黒服に美代先生を強制的に連行するように指示を出す。


「ギャア!? 何をする!? 私は世界を救った英雄だぞ!?」


美代先生は、2人の黒服に左右から挟まれて、カップラーメンから遠ざかっていく。


「私のカップラーメン!?」


美代先生が手を伸ばしても、カップラーメンは遠のいていった。


つづく。


(映画的なら、ここでエンドロールだね(⋈◍>◡<◍)。✧♡)

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