第9話 細菌娘の友達
「どうもです。」
美代先生が現れた。世間がセレブ医師の流行語大賞に飽き始めた頃、美代先生は、自分のセレブ生活を守るために、勝負に出る。
「美代先生。今日は何か重大な発表があると聞きましたが?」
「はい。それでは発表します。」
美代先生が何かを仕掛けるようだ。
「歯科助手、最強決定戦を開催します!」
「おお!」
おもしろそうな話に、マスコミのカメラのフラッシュが無数にたかれる。
「美代先生、おもしろい大会になりそうですね。」
「どうもです。」
その時、ステージに着物姿の最強の助手、みなみちゃんとペットのパンダのパンパンが現れた。助手は、番傘を持っている。
「うちの助手、みなみちゃんは、パンダ回しができます!」
美代先生は、無理難題を言う。
「パンパン。」
「キュルキュル。」
「えい!」
助手は、パンダを広げた傘に乗せて回し、パンダは傘の上で必死に走る。
「おお! パンダだ!」
マスコミがパンダに注目している。助手のみなみちゃんには、スポットライトは、当たらない。
「どうもです。」
この物語は、美代先生がセレブの座から落ちないように、次々と助手とパンダに一発芸を仕込むようになる前の話である。
「いや! なんて、清々しい朝なんだ! ハハハハハ!」
美代先生は、朝から絶好調である。
「先生、そんなに綾ちゃんが終わったのがうれしいんですか?」
「キュルキュル。」
助手とパンダは、先生を軽蔑の眼差しで見る。
「細菌娘さえ、終わってしまえば、怖い者は無い! このままセレブにまっしぐらだ! ハハハハハ!」
美代先生は、最高潮に達する。
「綾ちゃん、来週には、やってきますよ?」
「ああ!? 嫌だ!? 私のセレブになる夢が崩れていく!? ああ!?」
助手は、冷静に真実を告げる。美代先生は、精神が崩壊する。
「あ、誰か来たみたい? 今日の患者さんは午後のはずなのに?」
ピンポーンっと、呼び出しベルが鳴ったので、助手は見に行く。
「どちらさまですか?」
女子高生が2人受付にいた。
「あの、綾ちゃんの紹介できました。」
女子高生は、笑顔で残酷なことを言う。
「ギャア!?」
助手は、悲鳴を上げ、口から泡を吐いて、床に倒れこむ。
「あれ!? 大丈夫ですか?」
女子高生は、不思議そうに助手を見る。
「どうした!?」
「キュルキュル!?」
助手の悲鳴を聞きつけ、休憩室から美代先生とパンダがやってきた。
「せ、先生。綾ちゃんの友達です。バタ。」
女子高生たちを指さし、そう言い残すと、助手は気を失った。
「みなみちゃん!? 死ぬな!?」
「生きてます。」
助手は、先生の呼びかけに奇跡的に息を吹き返した。
「この病院、大丈夫かしら?」
「綾ちゃんの虫歯を治せるぐらいだから、腕はいいんじゃない?」
「そうだね。面白い人たちだから、お薦めってことでもないと思うし。」
女子高生は、2人しかいないのに、3人の声がする。
「あなたたちは、いったい!?」
「綾ちゃんの友達です。」
「ギャア!?」
今度は、先生が泡を吹いた。
「私は、友梨です。基本、普通の女の子なので安心してください。」
「普通!? 安心!?」
この辺りで、ドラマ化は諦めた。アニメ化はできるだろう。
「あっちのは、麻美ちゃん。大食いモンスターなので、なんでも食べます。」
「キュルキュル!?」
「パンパン!?」
麻美ちゃんという女子高生は、パンダをかじって食べている。
「パンパンを食べないで!?」
助手は、麻美の口から、パンダを救出する。
「大丈夫!? 溶けてない!? よかった!」
「キュルキュル!」
助手とパンダは、抱き合って無事を確認する。
「ちい! パンダは味がしないのね。」
麻美は、人類で初めてパンダを食べようとした。
「こっちは、ミクちゃん。」
「初めまして。よろしく。」
ミクという女子高生の声はするが姿が見えない。
「どうもです。って・・・姿が見えないんですが? 細菌娘の友達は、大食い娘だの、心霊娘だの、化け物ばかりか!?」
美代先生は、セレブになるための邪魔ものが増えたと驚愕した。
「ギャア!?」
いきなり美代先生は、体をコブラツイストで締め上げられた。
「言い忘れてたけど、ミクちゃんの特技は、プロレス技です。」
「ギャア!? 先に言って!?」
美代先生は、生死の境を彷徨った。
「先生、こいつら、きっと、ヤンキーですよ!?」
「そ、そうだ!? 番長は、綾ちゃんに違いない!?」
「キュルキュル!?」
怯える先生と助手とパンダ。
「お金なら、有り金全部差し上げますから、許してください!」
「先生はどうなってもいいから、私とパンパンの命だけは、お助け下さい!」
「キュルキュル。」
「ええ!? いりませんよ!?」
命乞いする先生と助手とパンダ。友梨は、お金はいらないと言う。
「おまえら、ここに何しに来た!?」
「歯を見てもらいに来たんですけど?」
「え? なんだ、それならそうと言いなさい。ハハハハハ!」
友梨たちは、歯を見てもらいに来たのだ。
「綾ちゃんが、美代ちゃんの歯医者は、私のおかげで儲かっているから、綾のお友達なら、顔パスだよって、言っていたので。」
確かに、美代歯科医院の名声は、綾の虫歯を治したことである。
「みなみちゃん、みなさんを診察室へ。」
「いいんですか?」
「早く診て、早くお引き取り願うんだ。」
美代先生は、聡明であった。
「君は、本当に綾ちゃんの友達かい!?」
美代先生は、友梨の口の中を見て驚いた。虫歯が無いのだ。
「綾ちゃんの、マブダチです。」
友梨は、たまに綾を裏切る。
「私は、綾ちゃんと違って、ちゃんと歯磨きをしますから。」
「お願いだから、綾ちゃんにも歯磨きをさせて!」
助手は、友梨に泣き崩れて抱き着いてお願いする。友梨は待合室に帰っていった。
「先生、この調子なら、平和に終わりそうですね。」
「最近娘の友達、恐れるに足らず! ハハハハハ!」
「キュルキュル。」
先生と助手とパンダは、素直に喜んだ。
「よし! 次の女子高生、いってみよう!」
「おお!」
「キュルキュル。」
麻美のいる診察室に向かった。
「ギャア!?」
美代先生は、大きな声で悲鳴を上げた。
「な、なんだ!? この虫歯は!?」
麻美の口の中に、MSB(ムシバ)の遊園地が営業していた。
「すごい! 虫歯魔法少年のアトラクションがある!?」
「キュルキュル。」
「感心するな!?」
助手とパンダは、麻美の口の中に感激した。
「それでは、後はよろしく。」
そう言うと、美代先生は、休憩室に逃げた。
「もう、先生に期待なんかしていませんよ~だ!」
「キュルキュル。」
助手は、自らの手で、MSBを破壊する気だ。
「私に、きれいにできない虫歯はない!」
「キュルキュル。」
助手は、気合を入れる。
「みなみ、いきます!」
助手と麻美の虫歯との戦いが始まった。
(フフフ、昨日、綾ちゃんの虫歯ランドを倒したばかりよ!)
(甘いな! 綾ちゃんの虫歯に比べれば造作もない。)
(くらえ! とどめのクリーニング波動砲! 発射!)
ドキューン! とぶっ放された、クリーニング波動砲は、麻美ちゃんの歯を、一瞬で真っ白に変えた。
「できました。」
助手は、MSBの洗浄に成功した。清々しい笑顔である。
「先生を呼んで来ますね。」
助手は、休憩室に美代先生を呼びに行った。
「先生、麻美ちゃんのクリーニング終わりました。」
美代先生は、コン! コン! とハンマーで、わら人形に釘を打ち込んでいた。
「先生、何をやってるんですか?」
「呪いには、呪いだよ! 呪ってやる! ハハハハハ!」
助手は、先生にかける言葉が無い。ハンマーを美代先生から奪い、先生に向けて振り回す。
「さっさと、虫歯を治してこい!」
「ギャア!? 危ない!? 叩かないで!?」
美代先生は、助手に休憩室から追い出され、渋々、麻美の虫歯を治しに行った。
「ありがとうございました。」
友梨と麻美は、虫歯の治療が終わった。助手が女子高生を見送る。
「お願いだからもう来ないでね。」
美代先生は、泣きべそをかいている。
「さすがに、1週間だと、虫歯にならないと思います。」
「綾ちゃんは、1週間で虫歯ランドを作っていたけどね・・・。」
友梨の言葉に、助手はダメージを受ける。
「この歯なら、いっぱい食べれそうね。」
麻美は、真っ白い歯に満足していた。
「さようなら。」
「もう来るな。」
こうして、友梨と麻美は帰っていった。
「ねえ、ねえ、麻美ちゃん。何か忘れてない?」
「思い出さないということは、大したことじゃないんだろう。」
「そうね。」
「ハハハハハ!」
2人は、忘れていることを気にしなかった。
「ああ~疲れた。」
「本当ですね。綾ちゃんの友達っていう感じでしたね。」
「みなみちゃん、お茶でも飲もうか?」
「たまには、先生が入れてくださいよ?」
「ええ~、みなみちゃん、助手なんだから入れてよ。」
「お団子、あげませんよ?」
「お茶を入れさしてもらいます!」
「パンパンも食べようね。」
「キュルキュル。」
こうして、先生と助手とパンダは、お茶休憩に入った。
「私の番は、まだか!?」
ミクちゃんは、診察室に忘れ去られていた。
つづく。
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