最強の歯科助手のみなみちゃん
渋谷かな
第2話 番外編 綾、虫歯になる
登場人物
綾・・・野菜嫌い、おやつ大好き女子高生。
お母さん
歯医者スタッフ
美代先生・・・怖い
みなみ助手・・・ブリっ子
朝。自宅。
綾「イタイ~!!!」
綾の大声が画面を飛び出す。綾はパジャマを着替え自分の部屋から出てお母さんのいるリビングに移動する。お母さんは朝ごはんの準備をしている。
「綾、おはよう。」
「お母さん、おはよう。イタタタタっ!」
「あら!? どこか痛いの?」
「歯が痛い。」
「まぁ! 大変!」
「痛いよ~。」
「大丈夫? どうして虫歯になったのかしら?」
「お母さんのチョコキノコ料理が原因だよ。」
「違います。お母さんは虫歯になってないもの。」
「ガーン。どうして私だけ!?」
「しっかり歯は磨いたの? 昨日、暑い暑いっていいながら、苺のアイスクリームばかり食べていたのはだあれ?」
「ギク! なぜそれを!?」
「学校には電話してあげるから、歯医者さんに行ってらっしゃい。」
「は~い!」
(やった! 学校に行かなくてもいい! 虫歯、最高!)
綾は歯医者の前まで来る。歯医者は本日オープンの看板がある。
「あ、新しい歯医者さんだ。」
綾は扉を開けて中に入っていく。歯医者の中は新しくきれいな内装だった。受付に助手の女の人がいる。
「おはようございます。初めての方ですね。」
「はい。」
「今日はどうしましたか?」
「歯が痛いんです。」
「分かりました。座ってお待ちください。」
「は~い。」
綾は待合室のソファーに座った。場面変わり歯医者のスタッフルーム。助手が扉を開けて中に入ってくる。
「先生! 初患者がやってきましたよ!」
「キタ~!」
中には歯医者の院長先生の美代がいた。
「長かった安月給の勤務医時代、お金を貯めに貯めて、やっと開業資金をつくり、自分の医院を持っことができた。」
「・・・先生。」
「これからはガッポリ稼いで、セレブ生活をするんだ!」
「・・・先生。」
「ブランドバックに、ドンペリに、あと外車もいいわね。」
自分の欲望の世界に入った先生は、助手が読んでるのも気づかない。助手は冷たい目線で呆れている。
「・・・先生。長く待たせるとセレブ生活が帰っちゃいますよ?」
「なに!? それは困る! 早く診療室にお通して! みなみさん! あなた! そんなこともわからないの!?」
「え!? 私のせいですか!?」
「さぁ、開業して1人目の患者だ。腕も鈍ってるし肩慣らしに削りまくるぞ!」
「プンプン・・・はぁ。」
「ハワイにしようか、パリもいいな。ワッハハハハハ~。」
先生は直ぐに夢の世界に入ってしまう。助手は綾を呼びに行く。
「綾さん、中へどうぞ。」
「は~い。」
中にはイスがリクライニングする診療台がある。歯を削る機械。うがいをする機械もある。
「それではイスに座ってお待ちください。」
「は~い。」
そこにセレブ生活のことしか頭にない、美代先生が歌を歌いながらやってくる。
「カモがねぎをしょってやってきた。バン!バン!バン!っと。」
「・・・先生。患者さんがいますよ。」
「おっと!?」
綾は鴨葱の歌を理解してないので気にしていない。美代はイスに座り、座っている綾と向い合せになる。
「おはようございます。当院の委員長、美代です。今日はどうされたんですか?」
「歯が痛いんです。」
「わかりました。歯を見てみましょうね。」
「は~い。」
「みなみさん、イスを倒して。」
「イスを倒しますよ。」
「おお!?」
綾はイスが真横にリクライニングするのに驚く。美代の頭の中は
(きれいな歯でも1年位は通院してもらうんだ。私はセレブになるんだ。)
「歯を見るので、お口を大きく開けて下さい。」
「は~い。」
「ギャア!?」
先生は綾の口の中を見て恐怖した。思わず大きな声を出してしまった。
「どうしたんですか!? 先生!」
みなみも綾の口を覗きこむ。
「ギャア!?」
綾の口の中は真っ赤だった。昨日食べた苺のアイスクリームがそのまま残っていた。歯の所々から苺が生えていた。奥歯にはチョコキノコも生えていたのだった。
綾の口の中は虫歯ランドになっていた。
「こんな歯を見たのは初めてです。学会でも発表されていません・・・。」
「・・・先生、あれって生えてるんですか?」
「わ、私は少し休みます。みなみさん、あとよろしく・・・。」
「そんなぁ! 私には無理です! プンプン。」
先生はスタッフルームに逃げて行く。助手は1人残された。
「・・・はぁ」
助手はため息を吐く。気合いを入れる。
「よし! みなみ、がんばる!」
「イスを元に戻しますね。」
「は~い。」
イスは寝台状態から普通のイスに戻る。助手は綾に説明を始める。
「今日は歯のクリーニングをしますね。」
「は~い。」
「自分の歯を見たことがありますか?」
「ありません。」
「毎日、ちゃんと歯磨きはしていますか?」
「してません。」
「歯に、いちごやチョコキノコが生えてましたよ。」
「すごい~。」
「・・・はぁ。ちゃんと歯磨きをしないと、おやつが食べれなくなりますよ。」
「ガーン!」
綾は始めて、歯の大切さに気付いた。
「虫歯を直してください!」
「わかりました。それでは歯の掃除を始めますので、イスをたおしますね。」
「お願いします!」
イスを寝台タイプにリクライニングする。助手はやる気満々である。
「まず口の中の赤いのと黒いのをきれいにします。口を大きく開けてください。」
綾は口を大きく開ける。そして助手はゴーグルをし、機器を手に持ちボタンを押す。ウイーン!!! 機器の作動音が鳴る。
「いきますよ!」
綾の歯に機器があたり、ギュギュギュギュギュ!!! 歯の削れる音がする。
「ギャ!?」
綾は気絶する。助手は機器を止める。
「大丈夫ですか?」
綾は気絶しているので返事をしない。助手の顔が笑う。
「チャンス!」
機器のスイッチをONにする。ウイーン! 助手は綾が気を失ったのを見て、歯のクリーニング作業に入る。ギュギュギュギュギュ!!! 助手は集中して作業を進める。
(まず苺を倒して、奥のチョコキノコを倒さなくっちゃ!)
(あぁ! 虫歯だらけね。いったいどんな生活しているのよ!?)
(プンプンしちゃうぞ!?)
「みなみ! がんばる! おぅ!」
助手は絶好調だった。バラエティー的に許されるなら、助手はお手上げで、綾の口の中に消火器のホースを突っ込み、苺とチョコキノコを洗い流す。でも、おもしろかっただろう。
場面が変わる。
綾は夢の中にいた。綾の体は巨大化していて、普段暮らしている街が足元に小さく広がっている。いつものように謎の声がする。
「綾、綾。」
「あ、神様?」
神の声は聞こえるものの、神様の姿は見えない。
「綾、歯をちゃんと磨きましょうね。」
「だって面倒くさいだもん。」
「そんなことでは野菜が食べれませんよ?」
「別にいいもん。野菜が食べれなくったって。野菜大っ嫌い!」
「おやつも食べれませんよ?」
「ガーン!」
「しっかり虫歯を直して、あなたの地球を守ってくださいね。」
「私の地球!?」
場面が変わる。
綾は目が覚める。イスが寝台のようになっていて、綾は横になって眠ってしまっていた。イスがリクライニングして、綾は自動で起き上がる。そこには先生がいた。
「お目覚めですね。まず鏡で自分の歯を見て下さい。」
綾は鏡で自分の歯を見る。
「おお~!」
歯が真っ白になっている。ピカン! と歯が光っている。
「真っ白~。」
「助手のみなみさんが命がけで、あなたの歯に生えていた、苺とチョコキノコを取り除きました。」
場面が変わる。
歯科医院の休憩室。歯科医院の休憩室で助手は倒れてピクピクしている。助手はノイローゼ気味に疲れてしまった。
「い、苺が・・・、チョ、チョコキノコが・・・、アハハハハ・・・。」
場面戻る。
診察室。綾は喜んでいる。
「わ~い! 虫歯が治った!」
「・・・はい!?」
「寝ている間に治るなんてラッキ~。」
綾は喜んでいる。歯もきれいになり、勝手に帰ろうとした。
「まだ虫歯は治っていませんよ。」
「え!?」
「汚い歯のクリーニングが済んだだけで、本番はここからですよ。」
「ガーン!」
イスのリクライニングが下がり、横の寝台タイプになり、綾は寝た姿勢になる。バラエティー的に許されるなら、手と足が拘束バンドで拘束される。ウイーン! 先生が歯を削る機器を手に持っている。
「いきますよ、細菌娘。ウイーン!」
「や、やめて~! 許してください!」
綾は必死に抵抗する。先生は口の中でバカンスを楽しんでいる虫歯をロックオンしている。
「虫歯め。私のセレブ生活のために覚悟しろ! ギュギュギュギュギュ!!!」
「ギャア!」
先生と虫歯の戦いは2時間も続いたらしい。綾の悲鳴はどこまでも響いた。
場面が変わる。
歯医者からでてきた綾は言った。
「歯医者なんか・・・大っ嫌い!」
綾は自宅へ向けて帰っていく。綾は歯医者に2度と行くものかと思った。しかし、今日は虫歯を削って詰め物をしただけなので、また来週も大っ嫌いな歯医者に行かなければならないのだった。
おしまい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。