向日葵の恋慕

序文

　この作品を始めるにあたって、私はいくつかの注釈を付け加えねばならないと思った。それを序章という形でもって語り出し、読者諸兄の皆様にどうかこの道化の演ずる奇態なる青春の不能の物語について一つ理解をして頂きたいと思った次第である。

この物語には或る一人の男の人生が描かれている。それはこの世に存在するありとあらゆる物語と同様に、実際の年月や出来事、社会思想とのズレが存在する。それは物語という存在が時を越えて存在し得るが故に起こる弊害であり、私はそれについて謝罪をこそすれ、それを訂正出来るとは思わない。人という種が滅びるまでの未来とそこに至るまでの過去を我が手中に収めようなどと、一体誰が考えられるであろうか！

故に。この物語は架空のものである。或る時代に生きた、或る男の人生を回顧しようという一つの試みであり、そしてこれは或る男の、青春の束縛と不能の物語なのである。