円環の希望と終末の龍王

働気新人

第0話 プロローグ

 絶望が鎌首をもたげる。

 すべての生物の頂点に君臨する最強の存在。大罪の名を関した七匹の生物。彼らが表れた瞬間人間は衰退した。海から、空から、陸から。人がなすすべもなく駆逐されていった。

 日本を狙ったのは”嫉妬”の龍王・リヴァイアサン。

 何物も受け付けない最硬の鱗。海を飲み干すかと思うかと思うほど巨大な口。どんな守りも意味をなさないほど巨大で鋭利な牙。

 動くだけで渦を起こし、開いた口は船を丸のみにする。この世で生物の頂点に君臨する『龍王』で最強と名高いリヴァイアサン。その名に恥じない迫力と威厳、そして戦闘能力を誇る。

 リヴァイアサンを見上げる人間に絶望を与え、簡単に心を折りに来る。やつは海から現れ、破壊をもたらす。

 輪龍悠馬と天塚ラルアを、リヴァイアサンが見下ろし口を開く。


『我に歯向かいあまつさえ傷をつけた娘はそやつだ。そやつを渡せばこの都市も小僧も見逃してやろう』


 地響きのような声が響く。

 悠馬は抑えられない恐怖で体が震えている。自分に向けられていない殺気ですら震えあがっている。

 ラルアもまた、恐怖で気を失いそうになっていた。殺気を直接向けられている。巨大な化け物に、いや……この世の頂点である『龍王』から直接だ。意識を保っているだけでも褒められるべきだろう。

ラルアは無意識のうち悠馬の白いジャケットをつかむ。

 わずかに震えるラルアに悠馬は銀髪を揺らしながら不敵に笑いかける


「……ラルア! 俺が必ず守ってやる。約束しただろ? 任せろ」


 悠馬はラルアの熱い視線を背にしてリヴァイアサンと対峙する。


「リヴァイアサン。悪いな、約束したんだ。ラルアは渡せない。日本もつぶさせない。俺はお前を倒す!」


 それは人類の希望だった。朝日が昇る。それを背にした日本の英雄。その場にいた全員が未来まで語り継ぐことを心に決め、その背中を脳裏に焼き付けた瞬間だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る