第8話

ゴウワは手渡された資料をゆっくりと読み進めていた

それをクーロはじっと待つ 握る手には汗が滲んでいたがゴウワがどのような反応を返してくれるかわからないためただ、緊張するしかない


ゴウワは歴代の魔王に仕えてきた重鎮の一人だ

ゴーレム族は守りにも攻めにも強い種族のため魔族領の軍事を任されてきた

現在は平和な時代が続いているため 小競り合い程度の戦いに駆り出されたりすることもあるが大きな戦は全くない


そのため有り余った力を治水工事関連に応用することに決めたのがゴウワ・ンだ

道路整備や建物の修理 災害の復旧などなど


そのため、改装工事などはお手の物な集団へとなっているのが魔族領の戦闘集団だ

なのでクーロは彼に断られたらこの計画がうまくいかなくなってしまうかもしれないという緊張感に乾く喉も気にせず じっとゴウワが読み終わり口を開くまで待つ


読み終わったゴウワはふむと口元に手を当てる

そっとクーロを伺い見れば 緊張した面持ちでこちらを見ている


これを魔王に就任してから考え 実行に移すべく某の元へときたのかと納得する

これはゴウワたちの力が必要な計画だ

魔王城を改装するという大胆な考えにいままでの魔王では考えもつかなかっただろう 若いからこその柔軟な考えだと面白く感じ ゴウワは隠した口元に笑みをうかべる


「施設の図面などは準備しておられるのか?」


そして、そう聞く

クーロは目を丸くして 数秒止まった後


「い、いや 私は建築に詳しくないので ゴウワ将軍の意見を取り入れながら決めていきたいと思っているのですが・・・それはではダメでしょうか?」


慌てて返事をする


「ふむ、それは有難い 適当に決められるのはこちらとしても仕事がし辛くなるのでな

それと、先程言った通り 某に敬語は不要ですぞ クーロ様」


「いいえ、ゴウワ将軍は私よりずっと先輩ですから たとえ魔王という立場であれ

教えを請うものとして失礼な言葉遣いはいけません このままで通させていただきます。」


「いやはや、それはなんともむず痒いものですな まぁ、クーロ様がそれでよいなら某はこれ以上何も言いますまい


では、この【魔族領再生計画 魔王城湯治村化案】 某の力でよろしければお貸しいたしましょう」


ゴウワはニコリと笑い 計画書パンっと叩く

その言葉にクーロはパッと表情が明るくなる


「本当ですか!! ゴウワ将軍 ありがとうございます!!」


「共にこの魔族領の未来を守ってまいりましょうぞ」


「はい!!」


そうして二人はガシッと握手を交わす


「取り急ぎ 建築に詳しいものを明日、某の部屋に呼びましょうぞ

時間はクーロ様の仕事が終わり次第 こちらに来ていただければ それまでに説明しておきますからの」


「はい、よろしくお願いいたします」


計画書は複製のためそのままゴウワに渡して その後、しばらく改装内容について

軽く話した後 クーロはゴウワの部屋を後にする


緊張は一気にとけ ほぅっと息を吐いた後 意気揚々と執務室へと戻って

明日の仕事を早めに切り上げるために今日のうちに最低限のことをするぞと意気込みながら


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る