優しさだけでは付き合う事が叶わなかったので、別の方法で口説く事にしました♪

おひるね

一章

第0話 きっとここはファンタジー


「すすす、好きです! つつつ、付き合ってく、だだだだだ……さい!!」


 少し噛んでしまったけど、やっと言えた。


 今日は卒業式。高校最後の日。


 俺と秋月さんが出会った思い出の場所。

 あの日は桜が満開に咲いてたよね。


 今はまだツボミ。だけど、俺たちの花を咲かせれば良い。なんてなっ! あははっ。


 告白するの、遅くなってごめんね。卒業してもずっと一緒だよ。



「……えっとね、八ノ瀬やのせくん? だっけ。あまり話した事もないし……ごめんなさいっ」


 あ……れ? 何かがおかしい。

 

「いや、お話ならたくさんしたよ? ほ、ほら覚えてない? 入学したばかりの4月10日、午前8時13分。この桜の木の下で、おはようって言ってくれたじゃん?」


「え……」


 えっ、てなんだよ? どうしてそんなにも驚いた顔をするんだ?!


「それからはクラスも違うから、少し期間が空くけど、10月の文化祭。俺のクラスはコスプレ喫茶だったんだ。いらっしゃいませって言ったらどもども〜って言ってくれたよね? 10月3日の午後1時34分」


「ご、ごめん……覚えてないや」


 もしかして君は……記憶喪失なのか?

 嘘だろ? 俺たちの時間、二人の思い出を忘れてしまったのか?!


「ほらっ! このノートみてよ? こんなにいっぱいお話してるんだよ?」


「なに……これ?」


 俺と秋月さんの思い出のノート。頼む……思い出してくれ。



「あ……ごめんね。じゃ、じゃそういう事だから、わたし行くね」


「あっ、ちょ、待って‼︎ 秋月さん‼︎」


「こっち来ないで。触らないで。気持ち悪いからーーっ」


 う……そ?

 あ……れ?


 あぁ、これは夢だ。この世界は幻だ。


 俺が秋月さんに振られるなんて、何かの間違いだ。




『きっしょ。こりゃビョーキじゃな』


 幻覚……? 妖精らしき物体がノートを物色してる。


『うっわ! まじうける!! なになに、11月2日、目が合った。やっぱり僕らは通じ合ってる。きっっっっしょ!! 腹痛いっ、最高じゃぁ!』




 幻覚、幻聴。妖精なんて存在するわけがない。



 なにかもが非日常。

 心が限界に達してしまいそうだ。



 ──夢なら覚めてよ……はやく。

 

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