第26話【子育て日記二日目】(朝食編その1)
【屋敷内廊下】
片手で引き
「少しは、休ませてくれよおぉぉぉ!!」
後方で文句を垂れ流す私のそんな言葉には、耳も貸してくれず無言で正面を向いており、長い長い廊下をひたすら引き摺られ、お尻に火が着きそうだった。
(ドレス特注で良かったな~普通だったら穴開いてるなこれ……)
そんな抵抗も虚しく、しばらくすると嘘のように大人しくなったが、むしゃくしゃして本気で暴れようかと思ったが流石に大人げない?と感じ、ぐったりと元気のない人形の様にニッシャは、動かなくなると頭の後ろへ手を組み喫煙しながら壁掛けの勲章や写真を眺めていた。
(協会からの賞状にお偉いさんとの
ぼんやり眺めていると、私を引き摺る張本人は、小さな声でこう呟いた。
「これから貴女には、あることをしてもらうわ」
人の家で皿洗いに、廊下掃除、それから毎日の日課とか言われて早朝に何十部屋もあるカーテンを開け、庭園並みの植木達に水をやったり散々な目に遭っていたため動揺もしなかった。
(もーどうにでもしてくれよ)
そんな心の声が聞こえそうな程ニッシャの目は、死んでおり、煙草の煙が「ユラユラ」と天井へ向かい、ニッシャが吐く息はため息混じりで煙たかった。
【引き摺られる事10数分後】
永遠と続かの様に「ズズズズッ」とドレスと床が擦れる音が段々と心地よい
(家と言うより、本当に美術館みたいだなここ)
そう関心していると、一旦立ち止まり、後方で何やら「ガチャガチャ」と音がし、続け様に「ギギィッー」と古びた音がすると思ったら、再び引き摺られる。
「着いたわよ。あの子達が起きる前にこれから、
【屋敷内調理場】
昨日の洗い場とは違い食器が無く、広々とした部屋のど真ん中に在るのは、真っ白な調理台が1台あるだけだった。
「デカイテーブルしか無いけど、料理出来る環境じゃないよねコレ?」
ニッシャが驚くのも無理はなく、調理台と呼ぶに必要な、「水道」「保存庫」「調理器具」が見当たらなく、そんな光景は、あまりにもお粗末と言えるだろう。
あまりの光景に開いた口が塞がらない程、
「あら、ごめんなさいね。朝食100+4人前だったわ」
①私
②ミフィレン
③アイナ
④ラシメイナ
+100名(!?)
目が点になり口を、「あわあわ」と震わせるとアイナは、続け様に喋りだす。
「おばちゃんのお弟子さん達のよ。毎日、朝の訓練があるから大変なのよ。ちゃんと栄養バランス考えて作ってよね」
アイナが
「調理方法は、任せるわ。今が7時だから、2時間あげるわ。104人前宜しくね」
動けない私を尻目に小さな体は、調理場を出る前にこう告げた。
「食材は、無限じゃないからくれぐれも焦がさないように」
一方的に淡々と説明され、昨日と同じ様に私に命令すると調理場に1人取り残された。
扉から出ていく小さな体を無言で見送ると、吸い殻を胸元へしまい、調理台に広がる食材を見やる。
「まぁ、しょうがない一丁やるかぁ……」
ここに来てからロクな目にあってないが、段々とこの状況に不思議と慣れ始めていた自分が怖く感じていた。
料理などただ焼けば食べれると思っていたニッシャであったが、全ての食材を「火熱」調理すると考える……104人前焼くとなると山火事のような惨状になるのを想像し、思わず笑ってしまった。
「それにしても、2時間で作らないといけないなんて本当に鬼だよなぁ」
アイナの顔を思い出す度に思わず身震いがし、気持ちを落ち着かせるため仕込み煙草をもう一本取り出し、喫煙しながら山盛りの食材を手に取り朝食作りを開始する。
【屋敷内廊下】
(子供達を起こすのは後にして私は残りの家事でもやりますか……)
ニッシャ一人を残し扉を締め切ると、調理場を後にするアイナは、足早に廊下を走りながら詠唱を開始する。
小さな指を鳴らすと屋敷中のカーテンは全て開き、せわしなく床を駆け回る箒や布巾、壁掛けの角度はひとりでに直っていき、庭園の植物達は自分達の
ニッシャが綺麗にしたお皿は、「大皿」、「中皿」、「小皿」とサイズごとに別れまるでお家に帰るように棚へ仕舞われてゆく。
(
【屋敷内子供部屋】
合図と共に寸分の狂いもなく一斉にカーテンが開き、朝陽が部屋全体を照らすその先には、まるで本当の姉妹のように1枚の布団に包まっている幼い二人は、今だ夢の中のようだ。
(もう食べれません……)
ヨダレを滴ながら食いしん坊な夢を見ている
朝食が出来るまで2時間あり、協会では色々あったため小さな体に、無理があっただろうと考え、アイナなりに気遣って起こすのはもう少し待つことにした。
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