第23話【S級任務並み】

ミフィレンを抱き抱え、同い年くらいの女の子へ近づき挨拶をする。


「私の名前は、ニッシャ!!この子の保護者兼育ての親って所かな。君の名前は、何て言うんだい?」

怖かったのか、赤子を強く抱いているのが分かる。

その気持ちは、正しいと思うよ。知らない人がいると思ったら、奇抜な見た目だからな。

私いま凄く変な髪型だしおでこには、機関車走ってて、右脇に動く錦糸卵抱えてるもんな。

(そりゃ怖いわ)


誤解を解くため、速攻で身だしなみを整えると自己紹介を仕切り直し、ようやく口を開いたんだけど、目が合っているのにどこか上の空ってかんじだった。


「私は、アイナ。そしてこの子は、ラシメイナって言うの。よろしくねニッシャ」


どうも、ミフィレンと違って大人っぽいと言うか、冷たい雰囲気をどことなく感じ、相変わらず右脇で「くるくる」としているこの子もいつしかこうなるのかなって思ったら悲しくなっちまった。


「ここの家主のばあちゃんは、どこいったんだ?」


そう呟くとアイナは、小さな手で私の胸元を指差す。

「トントン」と小刻みに叩くと、まるでトランプマジックの様に勢い良く物が飛び出してきた。


【煙草】、【一輪花のネックレス】、【煙草】、【煙草】、、【煙草】、etc……


床に散らばった、嗜好品を拾い集めると見慣れない物が目につく

「あららら、大事ないやし達が……ん?手紙なんて入れたかな?」


中身を開け、最初の文章を読み上げる。

【貴女を、朱天の炎‐ニッシャ殿とお見受けして1つ頼み事をします……】


数秒の沈黙があり全ての文章の黙読を終え、「そーっと」手紙を閉じ、証拠隠滅をするかの様に瞬時に燃やしたが、小さな燃えカスは、まるで小雪しょうせつでも降っているかの様に「しんしん」と宙を舞う。

相変わらず動じないアイナと「ケラケラ」笑いながら燃えカスで遊ぶミフィレン。

私は、安心して錦糸卵きんしたまごを抱えた状態で立ちあがりその場を後にしようとしたが、「ニッシャーこれなんて読むのー?」って天使の小声が聞こえ立ち止まり、嫌な予感がしたためぎこちない動きで小さな手元を確認する。


(なんか、燃えた手紙あるー!!)

再生?した手紙を取り上げ、再び燃やすと足早に部屋の出口へ向かい扉を開けようとした所で、眠っていた赤子が急に泣きだし、声が部屋中に響くとニッシャの体は、反射的に硬直してしまった。

散々思考を巡らしたが、「帰る」という選択肢は、消えていた。


「こりゃ、仕方ないか......」


頭を「ボリボリ」掻きむしると、脇に抱えている錦糸卵きんしたまごを下ろしアイナの方へ歩み寄り、しゃがみこんで赤子を優しくでると、不思議な事に赤子は直ぐ泣き止み「スヤスヤ」と寝息をたてたのを確認し、アイナを「チラッ」と見ると少しだけ笑っていた気がした。


(根は優しい子なんだな)


ゆっくりと深呼吸し、1拍置いた後に真っ直ぐ見つめ直すと衝撃の発言をする。


「しばらくは、私があんた達のお母さんだ」


驚くアイナと目を輝かすミフィレンを他所に自分でも何言っているかわからないが手紙の内容はこうだった。


【初対面の方に大事な子ども達を預けるのは、いささか不安ですが私は、魔法協会の方へ用事が有りますのでしばらく帰れません。

なので、子ども達の面倒を見てくれたら嬉しいです。屋敷内の物は自由にお使い下さい。よろしくお願いいたします。】


こうして私は、未婚で三児の母4日になった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る