いつだってあなたが私を強くする【2000文字版】

泥んことかげ

第1話【出会いと子育て】(1)

人里離れた山奥にある森


 この森は【外の園アウトガーデン】と呼ばれており、付近の住民はおろか、人とよべるものはいないとされていて、ここでは誰もが赤子同然になるのだ。


私の名は【ニッシャ】

並の魔法使いでは勝てない生物つまり、


【危険度level-Ⅰ~Ⅱ】の魔法生物しかいないここで私は余生を過ごしている。


 街の人間達は、生まれつき朱髪の私の事を【呪われた子】だって指を指しながら笑ってたんだ。


 髪だけじゃなく、眼も朱色に染まり、平均を越える魔力をもって生まれた私は、いつしか一人で生きるようになった。


 町のどこにいても、私の居場所なんてなかったんだ。

もしかして生まれてきたこと自体が……なんて考えた時期もあり、そんな生活に嫌気がさした頃、この森にやって来た。

はじめは、死にたいとか私だってできるってどこか認めてほしかったのかもな。

危険だがそれでいいと思う。

スリルと冒険は人生において、必要だって誰かが言ってたっけ。

この世には、必要な命とそうでない命があるとかなんとか……


「うん、でさ……長~い、前口上はいいとして。


こんな物騒な森で一人過ごしていたのだけど……なぜこうなった~!!」


その叫びは小さな祠で反響し森中の鳥たちは飛び立つ。


体長1000mm級の小さな少女の髪の毛を右手の炎魔法を器用に使いドライヤーがわりに乾かしながら叫ぶ。

あれはそう、いつも通り修行しようとだな……



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 私はいつも決まった場所で修行する。

そこには滝があり、そこで打たれながら瞑想するのが好きなんだ。

不思議とそこでは、生物同士の争いはない。

森で只1つの水辺にはあらゆる生物がくるが、その場所に通じるものには暗黙の了解があり、いつもどおり水で顔を洗い、いつもの様に滝に打たれ……


ん?眼の錯覚かな?

「なにかいる……」

 滝壺の付近に金色のもじゃもじゃの物体がいるのが、長い間この森にいるがこんな生物は見たことなかった。

森での最高危険度【危険度level-Ⅱ】の可能性を考えニッシャは戦闘態勢に入っが突然変異による【level-Ⅲ】の可能性も視野に入れる。


【それ】は今もこの森のなかにいると思うが、こんな小さな生物は見たことなくなにか特別な気配さえ感じている。

視線をもじゃもじゃの生物に真っ直ぐ捉え右手を差し向ける。

しばらく見ていると、小さな手やら、足等が覗いていて、人の様に見えた。


「子ども?」


 構えを解き片膝を地面につけ、両の手を広げると、くるくると時計回りに回りながら向かってくる。

目の前で止まり、私は、大量のもじゃもじゃを掻き分けると。

その生物は寝息を立てているのが伝わり間違いなく人の子だった。

どの様な夢を見ているのかわからないが恐らく食べ物の夢だろう。

よだれは、頬を伝い滝に垂らしている。

優しく抱き寄せ、他の生物に襲われぬ様に静かに隠れ家へと向かう。


 帰り道で寝顔を覗くとその子は優しく微笑んだ気がした。

それがたまらなく可愛くて可愛くて仕方がなかった。

隠れ家に着きくと抱き抱えながら器用に指をならし簡易式の魔法で入り口から奥まで順に灯る。

灯りがユラユラと洞窟内を照らす

ここには必要最低限の物資しかない

獲物を狩った際の作業机やその皮で作った寝具。

そんなのばかりで骨を組んで作った簡易的な椅子に座らせ。

幼子の濡れた体を拭き取りながら語りかける。


「お前名前は何て言うんだ?」

喋れないのか無言になる

「……」

少しだけきまずくなって

お互いに黙ってしまった

少しだけ間が空く。


「ん~、まだ喋れない年頃なのかな~、人と話すのなんて久しぶりだからな~」


もじゃもじゃは私の手からこぼれ落ちるように地面に倒れる

「おいおい!、どうした?お前……熱あるじゃねえか!」



その後私は必死で看病をした。

慣れないことを沢山したもんだ。

着ていた服は、濡れてたから乾かして

代わりの物作ってやったり、慣れない料理も作った。

自分以外に作るのなんて初めてかもな。

夜は森中の生き物が活発になるから、朝方取りに行ったり、熱が早く冷めるように、滝に水を取りにも行った。


「目……覚めたか?」

顔を覗きニッコリと笑いかける。

「お姉ちゃん誰?」


「私は、ここに住んでる、ニッシャって者だ、偶然あんたを見つけたんだ」


脅かさないように、うつ伏せになり、頬を両手で支え語りかけた


灯りは私達を優しく包み影を壁に映していた。

「これ、お姉ちゃんがやってくれたの?ありがと……」


暖かい食べ物や森の生き物で作った毛皮の毛布に目をやると恥ずかしそうに体を埋めた。


「こらこら、隠れるんじゃないよ」


 その姿が可愛くて、愛しくて毛皮を剥ぐともじゃもじゃ頭を両の手で掻き乱した。

少女とニッシャの笑い声が洞窟内に響き渡る。

看病のかいあってかそれから数日が経ち、少女はみるみる内に元気になり隠れ家の外で話しかける。


「あんた、良く見ると結構可愛い顔してるじゃん!!」


もじゃもじゃの髪は頭の後ろで結び、長い髪の毛は腰の辺りまである。

初めは、わたあめの様なその髪も、綺麗にしてあげれば真っ直ぐ可愛らしいもんだ。



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