WEDN
okaken
プロローグ
第1話 旅立ち
ツンツン・・・
今、誰かに頬をつつかれたような...気のせいか。
ペチペチ・・・
今度は叩かれた?でもまだ眠いしなぁ...
「サッサと起きなさい!」
バシンッ
「いってぇ!」
驚いて飛び起きた俺に誰かがまた話しかけてきた。
「やーっと起きたわね。まったく次があるんだから早くしてよね。で、あなた名前は?ちゃんと覚えてる?」
何が何だか分からないが、俺はこの羽衣をまとった女に名前を聞かれているらしい。ていうか起きないからって思いっきり顔叩くなよ。それに自分の名前を忘れるわけねーだろ。
「空です。谷本空。それより叩いたことへの謝罪はないんですか?」
「谷本空ね」
この女無視しやがった。人を叩いて謝らないとかどんな教育受けて来たんだよ。まぁなかなか起きなかった俺も悪いかもしれないけどこいつ......そういやこいつ名前なんだ?
「あんた何て名前なんだ?」
「そんなこと聞いたって意味ないわよ。どうせ2回しか合わないんだから」
「なんかないと不便じゃねーか」
「じゃあ女神様と呼びなさい」
......ふざっけんじゃねえよこの女。人が下手に出てりゃ調子に乗りやがって、そもそもその格好で女神とか無理があるだろうが。あそうだ。
「じゃあジャージ女と呼ばせてもらいますね」
そうこの自称女神はジャージに羽衣という変な格好をしていたのだ。羽衣はまだしもジャージで女神とかありえねぇだろ。
「まぁ何でもいいわ。それよりも現状とこれからのことについて説明したいんだけどいいかしら?」
「いや、いいんかい!そこは拒否しろよ!」
「うるさいわねぇ。本当に何でもいいのよ。ジャージ女がいいならそれでもいいから。ともかく現状の説明から始めるわよ」
「あっはい、どうぞ」
なんか納得いかないから後で絶対に拒否したくなる名前考えてやる。っと、それはおいといて現状かぁ。この女に気をとられてたけどそういえばここ何なんだ?ここ以外真っ暗だし何にもないし......まぁ説明してくれるらしいし聞いてみるか。
「それじゃあまず始めに、今あなたは死にかけて仮死状態にあり。このままだと死にます」
「は?」
「なので生き返りたかったら試練を乗り越えて魔王を倒してください」
「えっと~もう一度お願いしてもいいですか?」
「死にたくなかったら試練をクリアして魔王を倒してください」
「まじっすか?」
「まじよ」
いやいやいやいやなんだそれ。死にかけているっておかしいだろ。いまここにこうしてピンピンしてるのに死にかけ......っていうかこのままだと死ぬ?絶対嘘だ。
「その顔は信じていないわね。別にいいわよくあることだから。でも間違いなくあなたはこのままだと死にます。まぁ死にたいなら後ろの扉から出て行ってちょうだい」
彼女が手を上げると俺の後ろに扉が現れた。
「すっすいません!生きたいです。はい」
それを聞き彼女は手を下ろし同時に扉も消えていった。
「ただこうして今ピンピンしてるのに死にかけとか信じられなくてですね」
「当然の疑問ね。それじゃあこれを見てくれるかしら。」
そう言って手を上げると今度は何もなかったところにひとつの映像が浮かび上がってきた。そこに移っていたのは......
「俺めっちゃ傷だらけじゃん!」
そう俺だ。ただし救急車の中でストレッチャーに横たわり、頭には布が巻いてあり口には呼吸器がつけられ、おなかには大きな傷があり巻いてある包帯には赤いシミが広がっている。
「この通り今あなたは死にかけています。少しは信じる気になったかしら」
「えぇまぁ少し。でもだとしたらここは一体?」
「簡単に説明すると生と死の狭間ね。人はね死にかけると魂を守るために肉体から魂が一時的に離れるの。
もちろん離れても霊糸......まぁ糸のようなものでつながっているけれどこれが切れるまでに体が治らなければそのままあの世で次の転生を待つことになるわ」
「なっなるほど」
「それであなたはこのままだと体の治りが間に合わないのよ、残念なことにね」
「ええええええええええ!?」
「だけどまだ若い子供たちが死んじゃうのはかわいそうだから1度だけチャンスをあげることになっているの。まぁ悪い子は無理だけど。
というわけであなたにはその資格があったので魂をこっちの世界に連れてきて仮の肉体を与えたってわけ。その中に入れば糸が切れるまでの時間を延ばすことができるわ」
「......」
「理解できてるの?」
「えっえ~そりゃぁもうバッチリですよ。はい」
「まぁいいわ。とにかく今から行く世界で魔王を倒せば生き返ると思っていればいいわ」
「了解であります」
そう言いながら敬礼をした俺にあきれたのかため息をついている。
「それじゃあ職業を選んでくれるかしら。最初になることができるのは見習い戦士、見習い格闘家、見習い魔道士の3つよ」
「あくまでも見習いなんですね」
「あたりまえでしょ?何か空手みたいな格闘技を習っていればもう少し候補があったけどあなた何もしてなかったじゃない。ましてや魔法なんか存在もしてなかったんだから使えるようになるだけでもすごいことでしょ」
正論すぎて言い返せないのがむかつくけど仕方ないか。
にしてもどれを選ぶべきなんだろうか。てか戦士と格闘家は武器以外に違いがあるのか?
「あの~それぞれの特徴なんかを教えてもらってもいいですか?」
「戦士は剣と盾で戦い少しだけど回復魔法が覚えられるわ。
格闘家は魔法が使えないけれどその分物理的な攻撃力と防御力が高く、
魔道士は格闘家とは逆に魔法的な攻撃力と防御力が高いという感じね」
「となるとやっぱり最初のうちは回復魔法の使える戦士が最適か......他の職業にもなれるんですよね?」
「当然よ。そこはこだわってるもの。全部で100種類以上存在するわ。なれるかどうかはあなた次第だけれどね」
「分かりました。じゃあ戦士にします」
その瞬間光が俺を包み込み右手には木でできた剣が左手には銅の盾が現れた。
「木いいいいいいいいいいいい!?何で木!?ここは普通鉄でしょ!ねぇ!」
「あんたホントにうるさいわよ。いちいちツッコんでないであるがままを受け入れなさいよ。それと見習いなんだからその程度で充分よ」
「ちくしょう~あんまりだ~」
「いいからもう1つサポート妖精を選んでちょうだい」
「妖精っ!?」
「あくまでサポート用だから戦ったりはできないけれどね。種族は地水火風の4つがあるけどどれにするの?」
「風でお願いします!」
「なんでそこは即答なのよ。まぁいいけど」
彼女が両手を前に出すと光の球体が現れ、その中には緑色のショートカットで緑色のワンピースに身を包み、背中には4枚の羽がある30センチほどの妖精が眠っていた。
「美少女妖精きたーーー!」
「一応言っておくけど妖精たちは全員私と繋がってるから手だしするんじゃないわよ」
「もちろんですよ!美少女と一緒にいられることが大事なんですから!」
「そっそう。それならいいけど......じゃあ名前つけてくれるかしら」
「わっかりました!」
妖精の名前かぁ......フェアリー、フェア、シルフ、シルフィ......だめだボキャブラリーが少なすぎる。せめてスマホがあればなぁ......仕方ないかぁ......ん~......フェ、フィ......ン。フィン。うん、これにしよう。
「決まりました。フィンにします」
「じゃあその子に向かって呼びかけて」
やばいめっちゃ緊張してきた。
「早くしなさいよ」
「わっ、分かってますよ。す~は~......よし。君の名前は今日からフィンだ」
そう呼びかけると彼女を包み込んでいた光がはじけ、ゆっくりと目を覚ました。
「おはようございます。あなたが私のご主人様ですね?かわいい名前を付けていただきありがとうございます。これからよろしくおねがいします」
「俺は谷本空、こちらこそよろしくな。あと敬語じゃなくていいからもっと楽に友達みたいな感じで行こうぜ」
「了解なのです」
「そろそろいいかしら?」
「えっあっはい、大丈夫です」
「なのです」
「なら最後に一番大切なことを伝えるわ」
まだ何かあったのかよ。しかも一番って今までのよりも大切なことがあったのかよ。
「魂を繋ぎ止めておくにも限界があるわ。あなたの場合2年ね。それまでにクリアできなかったらそのまま死ぬことになるから気をつけなさい」
「めっちゃ重要じゃないっすか......2年......か」
それが長いのか短いのかは分からないけれどきっとなんとかなるよな。
「それじゃあいよいよ旅だってもらいます。準備はいいかしら?」
「どうせよくなくてもいかなきゃいけないんでしょ」
「よく分かってるじゃないの。それじゃあ扉を開くわね」
そう言い終わると今度は俺の目の前に扉が現れた。そして俺はそのとってに手をかけた。
「よし。いくぜ、フィン」
「はいなのです」
そして俺たちは扉をくぐって旅立った。
「彼らの旅路に幸多からんことを」
こうして俺たちの長く苦しい旅が幕を開けたのだった。
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