異世界での俺はヒロイン全員に嫌われているけど、それは台本で実際はモテモテな件

@rakugohanakosan

第1話ヒロインはみんな俺を嫌ってる? 其の1

「それでは、この問題を解ける人は、手を挙げてくれ」


 そう言って、先生が生徒達に挙手を求めている。


 黒板に書かれている問題は、小学校レベルの問題が二つである。『三角形の面積の公式は』、『円の面積の公式は』。


 と言っても、ここが小学校と言うわけではない。日本ではない異世界の、すべての分野のエリートが集まっている高等学校だ。この世界は、すべての技術水準が、日本とは比べものにならない低レベルな異世界だ。まあ、魔法のおかげで生活水準はにほんと大して変わらないが。


 と言うわけで、俺は思いっきり無双を楽しめるのだが、そんな俺をよく思わない人間もたくさんいる。


「はい、先生」


 そう言って、キリッとした様子で右手をあげる金髪の長い髪が印象的な女の子もその一人だ。そのきれいな青い目で、明らかな敵意をこめて俺をにらんでくる。


 この女の子の名前は、インテリジェンス。この学校で、トップの学業成績を誰一人寄せ付けることなく独走していた女の子だ。俺がこの異世界にあらわれるまでは。


 そのインテリジェンスちゃんの、ライバル意識丸出しの視線に負けて、俺も右手を挙げる。


 正直言って、こんな問題答えるのもバカバカしいのだが、とてもそんなことを言っていられる状況ではなさそうだ。


「それじゃあ、まずはインテリジェンス君。三角形の面積の公式を答えてくれ」


 先生がそう言うと、インテリジェンスちゃんはドヤ顔で答えるのだった。


「はい、先生。底辺かける高さ割る二です」

「うむ、正解だ」


 いかめしい顔をした、へんくつそうな先生がこんな低レベルな問題を出すのもお笑いだが、そんな問題を大真面目に答えているインテリジェンスちゃんもお笑いである。だが、周りの生徒達はそうは思っていないようだ。


「すげえ、さすがインテリジェンスさんだ。あんなに難しい問題をああもあっさりと」

「あこがれちゃうなあ。才色兼備さいしょくけんびって言葉は、インテリジェンスさんのためにあるのよねえ」


 そういった称賛の声がそこかしこから聞こえてくる。このインテリジェンスさんは、その学業における優秀さを鼻にかけることもなく、誰にでも親切なので、ほかのクラスメイトからの評判も抜群にいいのだ。ただ一人そのインテリジェンスさんが敵意を向ける人間がいる。まあ、俺なのだが。


「じゃあ、もう一つの問題を、イセカイ君、答えてくれ」


 “イセカイ”と言うのは、ここでの俺の名前だ。本名は、どうでもいいや。


「はい、先生。半径かける半径かける円周率です」


 さも当然そうに答える俺である。そんな俺のつまらなそうな態度が、クラスのみんなは気にいらないようだ。


「なによ、クールぶっちゃってさ。ああいうのが格好いいとでも思っているのかしら」

「新入りは新入りらしく、おとなしくしていろってんだ」


 俺は、この通りクラスのみんなから嫌われている。いきなりこの学校にやってきた転入生が、トップクラスの成績をかっさらっていったのだから、それも当然だろう。そして、クラスの中にとりわけ俺を嫌っているのが約一人いる。


 その他の誰も寄せ付けない学業成績トップの地位に、あっさり俺と言う転入生に並ばれたインテリジェンスちゃんである。まあ本当のことを言えば、そのインテリジェンスちゃんの成績をあっさり飛び越えることも、俺には簡単なのだ。しかしそれはいくらなんでも、みんなの反感を買いすぎるだろうと思い、ほどほどの成績を取るようにしていたのである。


 そんなインテリジェンスちゃんが、俺に宣言してくるのだった。


「あまり調子に乗らないことね、イセカイ君。いいこと、勘違いして欲しくはないんだけど、今はイセカイ君と似たような成績だけど、わたくしはまだ実力の半分も出していないのよ。ただ、いままでこのわたくしと並び立つ人間がいなかったから、本気を出していなかっただけなのよ。わたくしがちょっと本気を出せば、あなたなんかすぐにおよびもつかなくなるんだから」


 そんなありきたりのライバルキャラのようなことを言うインテリジェンスちゃんに、クラスのみんなも賛成する。


「そうだそうだ」

「インテリジェンスさんの言う通りだ」


 そして、俺はこう言うのだ。


「まあ、期待しているよ。ライバルは手ごわい方が、こちらとしても張り合いがあるからね」


 そんな俺の態度が、ますますインテリジェンスちゃんを怒らせたようだ。


「なによ、そのすました顔。だいたい、イセカイ君、あなたって人は……」


 そのいつまでも続くかと思われたインテリジェンスちゃんの悪口を、先生が止めに入ってくれる。


「まあまあ、インテリジェンス君。今回はそのくらいで……」


 すると、都合よくチャイムが鳴るのだった。先生が、授業の終わりのあいさつをする。


「それじゃあ、今日はこのくらいで。みなさん。ちゃんと勉強するんだよ」


 先生がそう言って教室を去ると、インテリジェンスちゃんが俺に食ってかかるのだった。今にも俺に飛びかかりそうな勢いである。


「いいこと、イセカイ君。くれぐれも、わたくしの言ったことを覚えておくのよ」

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